Milkのメモ帳

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【BLACK LAGOON】ヘンゼルとグレーテルは何故生まれたのか。【チャウシェスクの落とし子】


こんにちは。Milkです。
私は、「Black lagoon」(ブラックラグーン)と言うアニメが大好きなんです。

元々は漫画で、その後アニメ化されました。

そして、最近では連載が再開されたようです!

幾つか、まとまったストーリーがあるのですが、その中に「ヘンゼルとグレーテル編」があります。

私の中では1位、2位を争うぐらいに好きなストーリーです。

それは、悲しい双子の兄妹の話・・・

あらすじ

不法者が集まる街。ロアナプラ。そこは4つのマフィアによって、微妙な均衡を保っていました。

ダッチ、ベニー、レヴィー、ロック(元の名は緑郎/日本人)は、「ラグーン商会」と言う名前で運び屋を行っていました。

ある日、バラライカが率いるロシアン・マフィア「ホテル・モスクワ」を弱体化させようとする動きが出始めました。

当然ながら、マフィアのボス同士での会合がなされますが、どのマフィアの組員も殺害されていることが判明。

しかし、明らかに「ホテル・モスクワ」が殺害されている数が多い。

「ホテル・モスクワ」はその犯人を探し出すことに躍起になります。


その犯人は、2人組の少年と少女であることを突き止めたバラライカ。

そして、互いに「frate mai mare」(兄様/にいさま)、「sora mai mare」(姉様/ねえさま)と呼び合うことが分かります。

ロックは元々商社マンだったこともあり、バラライカは彼にその単語に聞き覚えがないか?と尋ねると、ロックは「ルーマニア語ではないか?」と答えます。

その「ルーマニア」と言う単語に反応したバラライカ。

裏ビデオを手がけていた者を呼び出し、児童ポルノビデオで用意できるだけの物を提出するように指示します。

その中から、ビデオで「ヘンゼルとグレーテル」と呼ばれていた、特徴がよく似た人物を見つけます。


彼らは、「チャウシェスクの落とし子」達でした。

最後には、互いに殺し合うというビデオまで撮らされ、ヘンゼルとグレーテルの双子はそれを生き残ります。

遂に、ヘンゼルとグレーテルは「大人の喜ぶ扱い方」を学び、「殺人鬼」と変化していくのです。

その双子を雇い、ロアナプラの勢力図を塗り替えようと考えたマフィアがありましたが、扱いきれずにそのマフィアは双子に虐殺されます。

彼らは「快楽殺人鬼」と成り果てていました。こうして生きているのは、周りを殺しているからだ。

殺しているから、僕たちは生き続けられるんだ。

バラライカに追い詰められた、ヘンゼルは死に際に言い放ちます。

「僕は死なないよ、死なないんだ。こんなにも人を殺してきたんだ。いっぱいいっぱいいっぱいいっぱい殺してきてる。僕らはそれだけ生きることができるのよ。命を、命を増やせるの。私たちは永遠さ。そう永遠なのよ。」

一方、グレーテルはラグーン商会に逃がしてくれるよう、自分を「運んで欲しい」と依頼。

しかし最後は、逃がし屋で有名だった男もバラライカに既に買収されており、港に降りた時にグレーテルは頭部を撃ち抜かれます。

「・・・きれいだわ、そら。」

そこには、孤児院でも、売られた先でも見たこともない、綺麗な空が広がっていました。

こうして、双子の殺人鬼は静かに消えていったのです。

チャウシェスクの落とし子

この双子は実在しない人物ですが、「チャウシェスクの落とし子」は実在します。

それはルーマニアがたどる、悲惨な歴史の犠牲者たちでした。

ニコラエ・チャウシェスクの独裁政治

ルーマニアはかつて、「ルーマニア共和国」として存在していました。

第二次世界大戦後、ニコラエ・チャウシェスクが大統領となります。


参照:ニコラエ・チャウシェスク - Wikipedia

そして、共和国でありながら、ソ連と違う方向を向いたため、「西側諸国」には歓迎されるという特異な状態でした。

またチャウシェスクは、国民の人口を増やすことが国力を増すことにつながると考え、以下のようなことを法律で定めます。

1966年、チャウシェスク政権はルーマニアの人口を増やすため人工妊娠中絶を法律で禁止とした。
妊娠中絶は42歳以上の女性、もしくはすでに4人(のちに5人に変更)以上子供を持つ母親のみ例外的に許された。
ルーマニアでは5人以上子供を産んだ女性は公的に優遇され、10人以上の子持ちともなると「英雄の母」の称号を与えられたが、殆どの女性は興味を示さずせいぜい子供2-3人程度がルーマニアの平均的な家庭であった。
また、秘密裏に行われた妊娠中絶の結果障害を負った女性、あるいは死亡する女性も少なくなかった。
チャウシェスクは上昇傾向にあった離婚率にも目を付け、離婚に大きな制約を設け一部の例外を除いて禁止した。
1960年代後半までにルーマニアの人口は増加に転じたが、今度は育児放棄によって孤児院に引き取られる子供が増えるという新たな問題が生じた。
これらの子供は十分な栄養も与えられず病気がちとなり、さらに子供を死なせた場合にはその孤児院の職員の給与が減らされるため、無理な病気治療のひとつとして大人の血液を輸血され、エイズに感染する子供が激増した。
こうした人口政策で発生した孤児たちは「チャウシェスクの落とし子」と呼ばれ、ストリートチルドレン化するなど後々までルーマニアの深刻な社会問題となった。

参照:ニコラエ・チャウシェスク - Wikipedia

つまり、中絶を禁止したため孤児として子供が捨てられるという状況が出てきたのです。

これらの子供たちは「チャウシェスクの落とし子」と呼ばれました。

それが、「ヘンゼルとグレーテル」のモデルとなった子供たちです。

その後、この政権は革命によって打ち倒されることになります。

「ヘンゼルとグレーテル」は、この革命によって孤児院からも追い出され、人身売買の対象として扱われたという設定になっています。

また、実は彼らの性別は明らかにされていません。

カツラを交換することで、どちらも「ヘンゼルとグレーテル」になることが出来ました。

それは、児童ポルノの影響により酷い扱いを受け、心身共に男性女性の区別が失くなったためと思われます。

ですから、ヘンゼルが亡くなったことを聞いたグレーテルは悲しみませんでした。

私はグレーテルであり、ヘンゼルでもあるからと・・・

革命後のルーマニア

革命によって、チャウシェスク政権は打倒されたとはいえ、現代でもこの余波は残っています。

ストレートチルドレンが多い国として、未だに有名な国だからです。

ルーマニアは、ヨーロッパ諸国の中で子供たちのエイズ感染率の最も高い国になっている。
これは1986-1991年の混乱期に、輸血や栄養剤の注射をするのに注射器の針も欠乏していたことなどが原因ともいわれる。
これらでは、孤児院などの児童保護施設で、貧しい食糧事情から栄養失調により体調を崩す子供も多く、それを即物的に治療する上で、栄養剤注射が常態化していたという報告も寄せられている。
この状況下で注射針の不足から、これら施設に収容された児童内にエイズが蔓延したと見られている。
これらストリートチルドレンのエイズ感染者は、充分な治療を受けるすべもないということで、さらに事態は悪化している。
加えて一部のルーマニアのストリートチルドレンは、男女の別を問わずセックスツアーの観光客、特に西ヨーロッパからの人を相手に売春行為を行い、これがヨーロッパ地域のエイズ患者増加を招いていると見なされている。
元よりこれらの子供は、体以外に生活資金を得る手段が無く、これが事態の悪化と長期化を招いている。
これらでは、観光客側は後の事を考慮せずにことに及ぶためコンドームを使用せず、加えて売春している子供らも貧しさからコンドームを購入できないという事情もあり、これも問題視されている。
またこれらの子供らには、日本での第二次世界大戦終結後からの戦後時代と同様に、ビニール袋からエタノールを吸引するといった問題行動が見られる。
エタノールの吸引は、空腹感を紛らわせる為に行っている。
こうした薬物への依存もまた貧困のなせる業といわねばならない。
セックスツアー観光客の中には、自身の娯楽のために違法な薬物を持ち込み、これを売春で買った子供らに提供するケースも危惧されている。

参照:ストリートチルドレン - Wikipedia

今でも、「ヘンゼルとグレーテル」は存在し続けているのです。

ドラキュラとの関係

Black lagoonの「ヘンゼルとグレーテル」は、何度も「八重歯」を強調する表現がありました。


これは「ドラキュラ」を強調していると思われます。

ドラキュラは、ルーマニアに実際に存在した人物なのです。

ヴラド・ツェペシュ

ワラキア公ヴラド3世(Vlad III , 1431年11月10日 - 1476年12月19日)、通称ドラキュラ公(Vlad Drăculea) または串刺し公(Vlad Țepeș / トルコ語: Kazıklı Bey)は、15世紀のワラキア公国の君主。
諸侯の権力が強かったワラキアにあって中央集権化を推し進め、オスマン帝国と対立した。
日本ではしばしば「ヴラド・ツェペシュ」と表記されるが、「ツェペシュ」は姓ではなく、ルーマニア語で「串刺しにする者」を意味し、「ドラキュラ」と同様にニックネームであって、名前は単に「ヴラド」である。

参照:ヴラド・ツェペシュ - Wikipedia

父親ヴラド2世がドラクル(竜公を意味する)であったため、その子どもと言う意味の「ドラキュラ」と呼ばれるようになりました。

また、その統治の仕方が冷徹であり、当時では普通であった「串刺し刑」を貴族にも適用したという異例な君主でした。

この冷酷さが重なり、「串刺し公」と呼ばれるようになり、後にドラキュラと言う呼び名はヴァンパイアと結びつくようになります。

「ヘンゼルとグレーテル」が八重歯をさらし、血の海をさまようような描写は、このドラキュラを表していると思われます。


彼らが、「何人も殺し続けたので自分たちは生き続ける」と主張したのは、今で言うドラキュラが血を吸い続けて、命をつなげて永遠に生き続けることに関係しているのでしょう。

そして、彼らはバラライカの部下を拉致し、死んだ後も頭に釘を刺す遊びを始めます。

痙攣を起こすのが楽しいのだと言って・・・


これも、ヴラド3世に由来すると思われます。

ある時、オスマン帝国からの使者がヴラドに謁見する際、帽子を被ったままでした。

なぜ帽子を取らないのかと問うとトルコの流儀であると応えます。

ヴラドはならばその流儀を徹底させてやると言い、帽子ごと使者の頭に釘を打ち付けたという逸話が残っているのです。

最後に

「ヘンゼルとグレーテル」は実在する人物ではありませんが、しっかりとモデルは存在するのです。

Black lagoonは、様々なストーリーがあるのですが、史実を上手く使いその後を想像して描写しています。

今回色々と調べてみて、改めてそのストーリーの骨格がしっかりしたものであると再確認しました。

中には、よど号ハイジャック事件で有名な「共産主義者同盟赤軍派」のストーリーもあります。

正義と信念。それは何なのか・・・

それを問う内容でした。

私は、「ヘンゼルとグレーテル編」が特に好きなのです。

彼らは、時代に、そして環境に歪められた子どもたち。

場所が違えば、彼らは本当に仲の良い幸せな兄妹として生きていたでしょう。

しかし、それが叶わない人間がいる。

あなたは、「ヘンゼルとグレーテル」から何を感じるでしょうか。

「仕方がないよ。姉様。殺すか殺されるかしかないんだ。この世界はそれだけだもの。」