こんにちは。Milkです。
先日、臨床心理士である専門家のご夫婦にお話を伺う機会がありました。
「Milkカフェ」について興味を持って下さり、内容を煮詰めていこうとなったんです。
「ネットは広大だわ。」
これは、攻殻機動隊の草薙素子が最後に残していく言葉です。
しかし、広大であるが故に、誰がどこにいて、そして何を求めているのか。
それが私には分からなくなる時があります。
※ 現在の「Milkカフェ」は、前身となる「Milkカフェ(Milk会議)」というサイトを、機能強化し、より専門に特化させたサイトになります。この記事は、「Milkカフェ(Milk会議)」の試験的運用が開始され機能の充実化を試行錯誤で行っていた時の話です。
(この時は、「うつ病」「双極性障害」というターゲットにまだ絞りきれていませんでした。小さな問題を相互支援することで、予防に重点を置くことを考えていました。)
専門家と共に「Milkカフェ」を練り上げていく
ある縁がきっかけで、臨床心理士のご夫婦から様々な話を聞くことが出来ました。
そこには私が想像するよりも、もっと根深い「リアルな世界」が広がっていました。
臨床心理士によっても専門が異なる
カウンセラーという仕事につくにあたり、「国家資格」というものは存在しません。
厳密に言うと、つい最近になってやっと「国家資格」が誕生しました。
しかしながら現時点では(2017/12/18)、この「国家資格」である「公認心理師」の受験可能条件であったり、民間資格の最高位とされる「臨床心理士」との実力差が有りすぎるのでは?など、様々な観点から議論がされている状態です。
この議論は専門家に任せるとして、今のところ「臨床心理士」が一番の「カウンセリング」の分野の専門家なのは確実でしょう。
さて、人の心の中(こういう言い方は本当は好きではありません。脳の関係するしっかりとした現象です。)は複雑であり、そのダメージと言うものは様々な種類があります。
それは、仕事であったり、人間関係であったり、虐待であったり、思春期特有に遭遇するストレスであったり、DVやハラスメント系など、その人がケアして欲しい内容は大いに異なります。
例えば、夫婦関係の問題であったとしても、バックボーンに潜む問題は片方の幼少期の辛い記憶が起因しており、それが生活のある特定のパターンに合致した時にフラッシュバックするなどです。
このように多種多様な問題が人の心には絡んでいるため、臨床心理士にも特に理解が深い分野というものが存在します。
例えば、医者だとしても、外科なのか内科なのか、或いは眼科や泌尿器科なのか・・・
そのように、一応は全ての分野を網羅(勉強)はしますが、その後に得意とする分野が分かれるということです。
また医者と同様に、その経験値によって更に熟練度が変わってきます。
今回のご夫婦の場合も、それぞれの得意分野が異なりました。
旦那様は介護分野を主に得意分野としているようでした。
奥様は思春期の悩みを得意分野としており、24時間ひっきりなしにLINEや電話などの「心の叫び」へのケアを行っているようです。
(実際に、話を伺っている間も、かなりの頻度で連絡が入っているようでした。)
奥様は自分の過去の経験などもあり「共感」をしながら進めていくタイプ。
旦那様は、一定の適切な距離を保ちながらケアを進めていくタイプ。
など、これもまたアプローチ方法が異なるように感じました。
このような「現場」を見ると、いかに多くの人たちが「心の叫び」を発しており、それをキャッチして欲しいのかという実情を目の当たりにすることになりました。
「Milkカフェ」の存在意義とは?
着席するなり、最初に言われたことは、「どこをメインターゲットとして捉えているのか?」でした。
実は、私の中でもモヤッとしていて、実体験をお話することから始めることになりました。
私は「うつ病」と診断され倒れる直前に、仕事の面や、プライベートな面で様々な問題を独りで抱えていました。
でも、独りで得られる情報量は少なく、そして導き出せる解も少ない。
とにかく誰かに話しを聞いて欲しかったんです。
旦那様「それは、掲示板サイトではダメなのですか? 例えばYahoo知恵袋とか。」
私も多くの掲示板サイトを巡回出来たわけではありませんが、足りないと感じた点は「専門家によるセーフティーネット」です。
支え合うとしても私たちは所詮、素人です。それが適切なアドバイスとして機能するか分からない。
ですから、ある程度は「専門家」にコネクトできる体制を整えたいと考えており、それが差別化だと思っています。
旦那様「なるほど。」
私としてはニーズのリサーチも兼ねています。
私達、SIerはサービスを展開したいと考えても、本当に求められているものを理解出来ていない。
だからこそ、医療や介護分野の事業提案は持ち上がりながらも消えていくのです。
そして、安定的に運営するには収益モデルも考えなければならない。大事なのは「安定的に、そして透明性を持って継続的な運営が可能」ということです。
奥様「NPO法人化は考えていないんですか? Milkさんなら出来そうな気がしますけど。」
正直そこまでは考えていません。
私にも生活がありますし、NPOやNGOの資金面での透明性は、健全に運営されているところもあれば見えない法人もあります。
よって、「ビジネス」と割り切った方が利用者も理解し受け止めやすいのでは?と考えています。
仮に私の範疇を超える規模となるならば、会社に機能を移管してもよいと考えています。
その方が、知名度等の観点からも信頼性は高まり、普及速度は増すでしょう。
奥様「出来ることなら、利用者からお金を得るという形は取って欲しくないんです。貧困の問題とも大きく関わっていたりしますから。」
はい。そうですね。私もその意見に同意です。
ですから、今はあくまでも「広告収入」によってプラットフォームを提供するという形をとっています。
個別に専門家と契約を行うには、さらに金銭面での支援が必要です。私個人の投資では間に合わない。
よって、申し訳ないですが「日本臨床心理士会」へのリンクの形での援助までが、個人で出来る限界と感じています。
これが会社のバックアップが得られれば、さらにコネクションは増えますし、資金面でも強固になります。
問題は、どうやって収益を得るかというモデルが立案出来るかです。
しかし、これはまだまだ未来の話。そもそも、利用率が少ない状態でこれを思案したところで意味はありません(笑)
正直。ニーズが無いようにも感じています。
奥様「そんなことはありません! 絶対にニーズはあります!」
そうですかね・・・
実際の利用率や、アンケートの回答数から考えると、あまり望めないのでは?と最近思い始めてます。
奥様「Milkさんのしようとしていることは意義があります。自分の時間を削ってでもその場所を提供しようとしているんですから。絶対にニーズがあって、必要としている人がいるんです。それは私が保証します。」
旦那様「まぁまぁ。そこまで興奮せずに(笑)」
あ・・・ありがとうございます。
しかし、どうやって届けるか・・・前途多難です。
ターゲットをどこに絞るか
旦那様「今のところ、ターゲットは絞っていないんですか?」
あくまで、コンセプトは「悩んでいる人と経験者をつなげる」ですから、特定の年齢層や悩みなどといったものに絞っていません。
私の考えでは、一本の筋として「相談者と周りからの支援」で成り立っています。これが悩みの数が増えることによって、結果的にジャンルが分かれていくことになるでしょう。
旦那様「ふむ。しかし、これはかなり大きなくくりになってしまいます。例えばモデルケースはありますか?」
はい。フィンランドで展開されているHeimoというサービスがあります。
これは何でも相談でき、それを周りが支援することが基本の使い方です。
またメンターと呼ばれる、ある程度の知識を持った運営が公認した登録者と直接にチャットすることも可能です。ただし、この部分が有料になります。
旦那様「なるほど。」
一時期は、この「チャット機能」を間借りする形によって、サポート体制を整えようと考えていました。
しかし、拠点がフィンランドであることや、公認のメンターが本当に「専門家」なのか曖昧な点。また、日本語も対応していますが、チャットのレスポンスがあまりに遅いという点から、セーフティーネットとして利用することはあきらめました。
奥様「それには同意です。本来ならば人物紹介に「専門家」を意味する内容が書かれるはずですが、どこにもそれは書かれていません。信頼度が低いです。」
はい。よって、方向性を変えることにしました。
「日本臨床心理士会」にお願いをしまして、最寄りの臨床心理士を探せるようリンク許可をいただくという形にしました。
個人で出来るセーフティーネットは、ここまでが限界だと考えています。
奥様「例えば、自助会を形成するのはどうでしょう? 自助会とは、同じ患者さん同士で相互に励まし合う場を設けたり、同じ悩みを持つ人同士が集まる場所です。サイトも幾つか立ち上がっていてサポートがされています。」
奥様「実際に互いに会いながら経験を話したりする場所もありますが、例えば「摂食障害」の場合はリアルに会うと、互いに痩せている状態を比較し合ったりする状況が起こるので、ネットのほうが良いという場合があります。また、「薬物依存」の場合は、リアルの場所では情報交換が成立してしまい、症状が逆行するパターンもありえます。ですが、試行錯誤を重ねながらも、互いに回復していこうという方向は同じです。」
本音を言いますと、そこは既にサポート体制が整えられていると思うのです。
自助会は、臨床心理士などが実際に入っていたり、互いに同じ症状や病状を支え合うことが成り立っています。
もう少し前の状態のサポートが薄いと感じています。例えば、仕事や育児に関して負荷がかかっている状態で、その時点で何か手を打てれば、「うつ病」に到達する前に救えます。
目指しているのは、病気になってしまう前。つまり、もっと手前の層なのです。
旦那様「ふーむ。それでは、ここが近いかもしれませんね。」
当事者研究ネットワーク | 当事者研究とは-当事者研究の理念と構成- (向谷地生良)
旦那様「ここは「当事者研究会」と言います。精神科医や臨床心理士の施すアプローチ以外で、自分たちで症状に対する解決策を探そうという場です。例えば、「赤面症」とか。日々の中での悩みについて、参加者が案を出し、それを実践してみて内容をフィードバックし蓄積する。そういった流れになります。私はインターネットに疎いですし、これは実際に人と会って参加することが前提となっています。これがバーチャルの世界で実現出来れば面白いと思います。」
確かに、互いに支え合う観点から行くと似たコンセプトなのかもしれませんね。
拡散力と利用しやすさについて
喫緊の課題としては、拡散力です。これはサイトの鮮度に関係してくるからです。
仮にこの「Milkカフェ」にたどり着いたとしても、互いに話し合う部分が停滞していた場合、「Milkカフェ」は事実上閉鎖していると感じるでしょう。
そのため、早めにある程度の循環が発生するようにならなければならないと思っています。
旦那様「確かにそれは言えますね。」
奥様「現段階では、Twitterでの伝搬を考えているんですよね?」
はい。今のところ、そこしか経路がないですね。
また、私の想定しているニーズに到達することが出来ていないことも問題です。
奥様「例えば、インターネットであればSEO対策をとるというのはどうですか?」
事実上それは不可能だと思います。
SEOとは、Google等のサーチエンジンのbotがWebサイトの品質を評価します。
つまり、相談内容が統一されていないため、特化型のサイトとは認識されません。また、タイトル等も関係してきます。要は、記事の内容の密度と関連が出てくるんです。
旦那様「しかし、やっぱりその狙っている層というのは、検索エンジンに直接単語を入れて検索するんじゃないかな。」
確かに・・・
そういう意味では、狙っている層のアクションによって、「Milkカフェ」に到達することは難しい状態になっていますね。
ですので、今はTwitterが一番の有力な拡散方法かと。
旦那様「これはかなり難しい問題ですね。」
奥様「もう一つ気になっているのは、使用している「文言」ですね。」
と言いますと?
奥様「例えば「記事を作成する」と言う文言は、何を指しているのかパッとは分かりません。単純に「相談」にした方が良いかと。」
あぁ・・・確かに言われてみれば・・・
奥様「後は、「メールアドレス」です。これは必要なものですか?」
これに関しては、本人確認の為に設定していました。
相談内容の変更依頼が発生した時に、本人ではなく誰か違う人が成りすます可能性も無きにしもあらずです。
奥様「少しでも個人情報は晒したくないという気持ちが出ると思います。そういう部分でも敷居が高くなっているかと。」
そうですね。うーんと、単純に本人と分かればいいので、パスワード設定に切り替えましょう。
最後に
気付かないうちに、3時間以上も話し込んでいました。
これ以外にも、重い悩みや苦しみを抱えている人たちがどれだけいるのかや、どういった支援ネットワークが存在するのか。
また、そういった人々への支援が、どれだけ足りないのか・・・
本当に多くのことを教えて頂きました。
私は、安易な気持ちで足を踏み入れてしまったのかもしれない・・・
帰宅してから少し怖くなりましたね。
この世界は、インターネットが存在することにより、2つの世界が共存することになりました。
少なくとも私はそう感じています。
リアルの世界で活動を行い支援を行うこと。
しかしながら、それは波及速度が遅くなったり、全国をカバーするまでに至らなかったり。
もう一つは、インターネットの世界にもぐり、彼らの気持ちを汲み上げること。
今度は、そのつながりは目には見えず、そして広大すぎて、どこに誰がいるのか分からない。
しかし、その2つの世界を併せ持ちながら、人は今動いている。
「ネットは広大だわ。」
私には見えない世界が、まだまだ隠れている。
非常に困難なプロジェクトですが、まだしばらく私は少しずつでも努力してみるつもりです。
必要としている人に、届くように・・・