今回は、私が大好きなアニメを紹介します。
「攻殻機動隊 Stand Alone Complex」
俗に、攻殻機動隊SAC ってやつですね。
もう何年も前になりますが、大学の時に友人に薦められて見たのがきっかけです。
でも、作成されたのは2002年だそうです。信じられないクオリティです。
アニメ制作会社、Prodaction I.G が手がけたのですが、Prodaction I.G と言えば「攻殻機動隊」というイメージが定着するほど、広く知れ渡ることになりました。
最近、再度無性に見たくなり、この「The Laughing Man」バージョンのDVDを借りてきてしまいました。
The Laughing Man
色々と説明をする前に、世界中から愛されている攻殻機動隊の、MAD(ファンが作っている、好きな曲と合わせてダイジェストになった動画)を幾つか紹介します。
先ずは、アニメのOP曲で作られたMAD
全然関係ない曲と合わせて、格好良く作られたMAD
(外国ではAMVと言うみたいです。途中で関係ない人の顔とか入れて遊んでますが(笑))
なんとなく世界観を知っていただけたでしょうか。
今回は、攻殻機動隊の数ある話の中で、「The Laughing Man (笑い男事件)」を紹介します。
概要
「西暦2030年、電脳化が一般化され情報ネットワークが高度化する中で、光や電子として駆け巡る意思を一方向に集中させたとしても、「孤人」が複合体としての「個」となるまでには情報化されていない時代。」
という文言から話は始まります。
人の脳を脳殻というユニット(脳の入れ物)に収納することが可能(作中では電脳とも呼ばれる)になり、身体を義体化(サイボーグ化)することが出来るようになった世界です。
そのため、首の部分にインターネットに繋げられるジャック部分を持っていたり(映画「マトリックス」の原案になったのはこの「攻殻機動隊」の世界観です。)、考えるだけで言葉を無線通信で相手に送ることが可能になっています。
こういったITの目覚ましい技術の進歩に合わせ、犯罪も複雑さを増すようになりました。これに対処するため、従来の警察とは別に、独自の権限で捜査する特殊機関「公安9課」(通称:攻殻機動隊。公安なんで、やはり秘密組織ってことですね。)が設立されました。
公安9課の課長は荒巻大輔。そして、主要メンバは、草薙 素子(仲間からは少佐と呼ばれる)、バトー、トグサ、イシカワ、サイトー、ボーマ、パズ等で構成されます。
### 笑い男事件
2024年2月1日に、セラノゲノミクス社長の瀬良野氏が誘拐された。そして、2月3日の天気予報TV生中継中に、誘拐犯が瀬良野氏に拳銃を突きつけた状態で乱入した。誘拐犯は瀬良野氏が持っている秘密をTVの前で自分の口から暴露するよう要求。しかし、押し問答により時間がかかったため、誘拐犯はあきらめて逃走した。
誘拐犯は逃走しながら、自分を見た人間の電脳、監視カメラに侵入し、”笑い男”の画像を自分の顔とすり替え続けるという、超特A級ハッカー並(作中では素子をしのぐかとも言われた)の技術を駆使して証拠を残さず消え去った。
事情聴取をすると、誘拐犯の目撃者すべてが”笑い男”の顔を描いてしまった。
その後、笑い男を自称する者が、「医療器具のナノマシンにウイルスを混入されたくなければ、身代金をよこせ」とナノマシン医療機器メーカーに要求。日本の有名なナノマシン医療機器メーカーを次々に標的にする。
複数のメーカーを相手にした後に、笑い男の行動は収束する。その後、これらを含めた一連の事件は”笑い男事件”として迷宮入りしてしまう。
しかし、最初の事件から6年後、警察内の不祥事に対する警視庁の会見中、説明者のうちの一人が電脳をハックされ警視総監の暗殺が予告される。この際も、ハックされた人物の顔が笑い男の顔にすり替えられTVで生放送されてしまった。
再び動き出した”笑い男”
警察や政府の怪しい動きを感じた公安9課は、独自に”笑い男事件”の捜査を始める。
感想(ネタバレ含む)
すみません!言いたいことが沢山あったので、概要だけで長くなってしまった・・・
実はこの「Stand Alone Complex」は、原作に忠実ではありません。攻殻機動隊は士郎政宗さんの漫画が原作です。
そして、それをアニメ映画化したのが「Ghost in the shell 攻殻機動隊」となります。
そして、その続編が「イノセンス」です。
これらは、原作を中心にして話が展開されているようです。
私は「Ghost in the shell」は見ました。正直、好きではありません。多分、押井守監督が好きじゃないからだと思います。
(だって、難解そうな作りにわざとして、結局話がチープなんだもの・・・)
「Ghost in the shell」では、”人形使い事件”を中心に話が進みます。
事件の犯人である高度な知能を持ったプログラム(人形使い:今で言うAIでしょう)が自分を”人間”であると主張します。
人の考えも行動もプログラムされた行動とどう違うのか、とその人形使いは語り亡命を希望します。
最終的には、素子の電脳の中に入り、素子は人形使いでも素子でもない、何か他の人間になってしまいます。
そして、彼女は居なくなってしまうのです。 はぁ・・・説明が長かった・・・
Stand Alone Complex シリーズ
なので!!!原作では、素子はどこかに消えてしまうのです。
この「Stand Alone Complex」は、素子が人形使いに出会わなかったら?というコンセプトのもと制作されています。つまり、アナザーストーリーなのです。 さらに言うと、「Stand Alone Complex」もシリーズ化され、
- Stand Alone Complex(SAC):笑い男事件
- Stand Alone Complex 2nd GIG(2ndGIG):個別の11人事件
- Stand Alone Complex Solid State Society(SSS):傀儡廻事件
と3作品できています。SACと2ndGIGはドラマ仕立ての複数話構成です。 で・・・この 「The Laughing Man」は、SACの中から笑い男事件に関係する部分だけを集めたバージョンということです。
笑い男事件の真相
内容を説明するのは非常に難しい・・・
なぜなら、日本の組織(政府、警察、軍等々)が互いの利権を守るために、各々で動き回るからです。
結局のところ、アオイ(自称アオイと述べていて、恐らくはジョークだと思います。)という青年が”笑い男”の正体なのですが、彼が起こした事件は、瀬良野氏を誘拐した事件だけでした。
その後の事件は、それに便乗し偽物の笑い男と政治家が手を組み、ナノマシン医療メーカーをゆする(笑い男とコネクションがある政治家を知っているとして、政治献金を勧める)ということがなされていたというのが事件の正体です。 最初の事件発生当時、電脳化が行える技術が確立されても、まれに脳自体が硬化して死んでしまうという電脳硬化症と言う不治の病が発生するようになりました。
医学博士である村井氏が村井ワクチンという治療法を偶然にも発見しましたが、中央薬事審議会理事長の会長であった今来栖という人物が、自らの権威を守るために村井ワクチンを不認可としました。
そして、まだ技術的に未発達な状態であった瀬良野氏のナノマシン医療技術の方が、電脳硬化症に効果があると主張したのです。
アオイは、インターネットに接続してあちこちをハッキングしている時に、村井ワクチンが利権によって無きものにされたことを知ります。
そして、人の利己的な欲望により、多くの人々が亡くなっている現実を知ったのです。
彼は青い正義感からいてもたってもいられなくなり、瀬良野氏を説得しようとします。
しかし、大人の世界は複雑でそれを受け入れるべきだとして聞き入れてもらえませんでした。
そして、最後には銃で脅す行動にでます。
しかし、引き金を引くことは出来なかったのです。
彼は、悲惨な状態を知りながら、それを解決する手段や力を持たないことに打ちひしがれます。
そして、その後は固く口を閉じ、耳を塞ぎ続けることにしたのです。
しかし、彼は再度動くことを決心します。そして、素子に接触を図り、彼の電脳の記憶全てを彼女の電脳にコピーするのです。
このことで、公安9課は”笑い男事件”のアオイの側面からの事件を知ることができ、アオイは公安9課が自分に出来なかった正義を果たしてくれることを見守ります。 重要なポイントとして、「ライ麦畑でつかまえて」という本が出てきます。笑い男に描かれている文字は、その本からの引用です。
僕は耳と目を閉じ、口を噤んだ人間になろうと考えた
I thought what I’d do was, I’d pretend I was one of those deaf-mutes
アオイが強大な敵に立ち向かい、こてんぱんに叩きのめされた時の心情として使われました。
私がこの”笑い男事件”が好きなのは、アオイが自分の若い頃に似ていると感じたからです。
世の中には多くの不条理・不公平が蔓延しています。そして、それに対し怒りを覚えるのです。
でも、どんなに自分が声を大にしても、大きな力の前では意味をなさない。最後には、自分の無力さに絶望するのです。
青い正義を信じ、そして現実に裏切られる。
誰しも通る道なのでしょう。そして、ある時点で「仕方がない」と折り合いをつけるのです。
でも、本当にそれでいいのか。自分に問いかけてみろ。そう言われているようで、毎度見ながらアオイと共に心が燃える自分に対し、まだまだ青いんだなと苦笑するのです。
Stand Alone Complexとは
さて、あと一つ重要な点を付け加えなければなりません。
それは「Stand Alone Complex」という題名です。
これは、ネットワークが発達し、情報が常に同期できる世界が実現した際に、個人を特定し続けることが出来るかという問いです。
つまり、アオイと素子は記憶を共有しました。
素子はアオイの記憶を全て知ることが出来るようになったのです。
同様にして、素子の記憶をアオイに入れたら?皆が同じ記憶を共有して持つとしたら?
一体、誰がアオイで誰が素子なのでしょう。
そして、あなたは一体誰があなたなのでしょう。
あなたは誰?
それが、個人であるが複数の記憶が入り組み矛盾した状態:Stand Alone Complex であると述べているのです。
これは、今の世界でも徐々に始まっているのかもしれません。
最後に
さて、相当長くなりました。(本当にごめんなさい。)
でもそれぐらい大好きな作品なので、是非見てみてください。 皆さんは、どんな感想を持つでしょうか。
ではでは。