Milkのメモ帳

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流れるような言葉の世界へ。「四畳半神話体系」


こんにちは。Milkです。
今回は、大好きな作者の話。

昔、読んだ小説でとても気に入っており、そしてアニメ化されたと聞いていたのですけど、結局見れず終いでした。

それは「四畳半神話体系」です。

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森見登美彦

「四畳半神話体系」の著者は森見登美彦さんです。この人は以下の小説が有名ですね。

夜は短し歩けよ乙女

確か、かなり初期の頃の作品だったと記憶しています。

この方の文体はかなり特徴的で、意味がないようで意味のある言葉で畳み掛ける感じがあります。

この意味がないようで意味があるというのがポイントです。

つまり、ある心情や状況を、圧倒的な文章量で押してくるのです。かなりユーモアのある言葉で。

西尾維新とは、また違う方向です。

彼の場合は、言葉遊びの情報量で畳み掛ける(単純に言ってしまえばギャグ)タイプですが、森見登美彦の場合は、ある物体に対し様々な角度からの観察結果を情報としてこれでもか!というぐらいに付加していくタイプです。

この「夜は短し歩けよ乙女」は、この森見登美彦節がまだ完成しきっていない状態であるので、少々読みにくい。

正直に言えば、私はこれを読破出来なかった。

また、機会があればもう一度トライしようと思っています。

有頂天家族

この著者は、「有頂天家族」という小説も書いています。

これは2010年の作品で、森見登美彦節が完全に完成しており、そしてストーリーの厚さも十分です。

私はこの小説が大好きで、電子版でも単行本でも購入してしまいました。

これはまた近いうちにご紹介しましょう。

概要

では、四畳半神話体系の概要に戻りましょう。

”私”は、京都の大学に通う3回生で、下鴨幽水荘の住人である。1回生の入学式の際に薔薇色キャンパスライフを夢見て、テニスサークル「キューピット」に入った。

きっとそこで、「美しいもので頭がいっぱいな素敵な黒髪の乙女」と出会えると思ったからである。しかし、薔薇色キャンパスライフを達成するためには非常に高いコミュニケーションスキルが必要であり、”私”はそんなスキルを持ちあわせていなかった。

その時、「夜道で会えば10人中8人は妖怪と間違え、2人は妖怪と納得する」風貌の小津と出会う。彼は人の不幸で飯が3杯は食える男であり、”私”とは同回生であることもあって、悪友となってしまう。

そして、2人は3回生になるまでに「キューピット」の中での恋愛の縁を切って切って斬りまくり、「死神のキューピット」と呼ばれるようになる。

しかし、”私”には何かと面倒を見てくれる女性、明石さんがいた。明石さんは1つ年下の2回生である。彼女とは1年前に古本市で出会い、彼女のクールな性格に興味を持って話をする仲となる。その時、明石さんとある約束を行うが、”私”はそれを忘れてしまうのである。

さて、そうこうしているうちに小津の悪戯が他のサークルにばれ、自分も巻き添えを食う形になる。追い詰められた”私”は小津を追いかけていた人々に河に突き落とされるのである。

河へ落ちる途中、走馬灯のように過去3年間が思い出される。

あぁ!なんということだ!小津なんぞと出会わなければ!

そして、「キューピット」ではなく、他のサークルを選んでいれば、きっと薔薇色キャンパスライフを満喫していたに違いない!

そうだ。絶対にそうに違いない!

その時、時間は巻き戻る。

”私”は、別のサークルを選択する人生を始めるのである。

感想(ネタバレ含む)

このアニメは、森見登美彦節をどのように損なわないかというかなり難しい問題に対して、怒涛の”私”ナレーションで押して押して押しまくるという、画期的なアニメとなりました。

そういう意味でも、話題になったんですねー。


「四畳半神話体系」裏話

実は、「有頂天家族」のあとがき(解説)を書いている方で、上田誠さんという人がいます。彼が、この小説のあとがきに「四畳半神話体系」のアニメの脚本を担当した当時の裏話を書いています。

「四畳半神話大系」の核となる部分を取り出し、あとは12話分再構成すれば良いと単純な気持ちでいたが、核となる部分を削り出せば削りだすほど、中身が薄くなってしまう。つまり、文章全体が必要な箇所のように思えて、いずれの部分も削れなくなるという「恐るべき愛の迷路に迷い込んでしまった。」と述べています。

まぁ・・・それほど、この森見登美彦節は面白く、そしてアホらしく、そしてそのアホくささがクセになるのです。

アニメ版では、結局のところ森見登美彦節を削ることが出来ず、ありのままの形で提供する、つまりこれが怒涛の”私”ナレーションという今までとは全く異なるパターンのアニメを作ることになってしまったと述べています。

アニメ版について

さて、アニメ版の感想ですが、私は大好きです。

これはこれで有りですね。初めて見る人は”私”ナレーションがうるさいと感じてしまうかもしれませんが、原作好きの私としては、「よくぞここまで詰め込んでくれた!!」と思う評価です。

つまりは極端に言ってしまうと、京都の大学生の少し変な日常を様々な角度で見て、面白おかしく書いているというだけの小説ですから、その日常で感じた”私”の愚痴が大事なんです。

小津の外見を書くだけでも「夜道で会えば10人中8人は妖怪と間違え、2人は妖怪と納得する」と表現することからも、だいたい察しがつくのではないでしょうか?(笑) そういう風に、少々ひねくれて毎日を送る”私”の日記だと思えば良いのです。

この話はパラレルワールドものです。

”私”は最初、テニスサークル「キューピット」に入り、薔薇色キャンパスライフを目指しますが、小津という悪友が出来てしまうことでその夢は崩れ去ります。

時間は戻り、”私”は映画サークル「みそぎ」に入り、薔薇色キャンパスライフを目指しますが、城ヶ崎というサークルの部長と対立し、結局は小津という悪友とともに城ヶ崎帝国の転覆を図ります。

あれ?皆さんもお気づきですか?

そう。結局のところ小津と悪友になってしまうのです。

そして、大事なのはこれは記憶を保ったまま時間が戻っているわけではないということ。つまり、「もし”私”が他のサークルを選んでいれば!!」という、たらればの世界を描いているのです。

なのですが、”私”は結局の所、小津と悪友となり明石さんと何らかの形で出会うことになります。

いずれの選択をしても、小津と明石さんとの縁は切れないようです。(笑)

そして、遂に究極の選択を行うことになります。それはズバリ、四畳半から出ないこと。誰とも縁を持たず、四畳半の自宅から極力出ないという選択を行います。(つまり、小津と明石さんにも出会わなかったら?という世界)

すると、いつしか玄関を出ても、窓から出ても、同じ四畳半の自宅につながってしまうという世界に落ち込んでしまうのです。

ですが、各部屋は少々違いがあります。

ある部屋では、「キューピット」で縁を切りまくっている”私”と小津の痕跡。

ある部屋では、「みそぎ」で”私”と小津が奔走した痕跡・・・

他にも、色々な形での小津との何かしらの縁を感じる痕跡があるのです。”私”は小津と面識がない。けれども、小津という青年と楽しそうに絡んでいる”私”がそこにいる。

四畳半の世界が唯一至高であると信じていた自分が馬鹿だった。この小津や明石さんなる人物と楽しそうに暮らす毎日が愛おしくて懐かしい。

自分は何故、こんな世界に閉じこもろうとしていたのだろうか。

絶望に浸っていた時に奇跡が起きます。部屋の外から小津を成敗しようと騒ぐ群衆の声が聞こえるのです。会ったことも、話したこともない。けれど小津は俺の親友だ!そう思った時、永久の四畳半の迷路が終わり、外へと出られるのです。

必死に走り、骨折してボロボロの小津を助けます。小津は「あんたなんか知らない!何故、助けようとするのです!!」とキーキーわめきます。

”私”は「君とは運命の黒い糸で結ばれているのだよ」と言って話は終わります。

結局何が伝えたかったのか

そうですねー。これは、皆が通る大学生のあのふわふわしてて馬鹿みたいに無駄のように過ごしてる時間を描いているだけです。

でも、そんな無駄のようで無駄じゃない時間が愛おしい。懐かしい。と思える小説です。

馬鹿やっている、または馬鹿やるのが許される唯一の時間じゃないでしょうか。

あの時は、もちろん学業に時間は割いていますが、20歳を超えて大人の仲間入りを果たしながらも、まだ学生という中途半端な時間。

大人になりきれない、けれども大人なんだぞって背伸びしてみる。そんな時間です。

それを懐かしむことが出来ます。  

そして、「たられば」なんて意味がないというのもポイントかなと思います。あの時ああしてれば!とか、あの時こうしてれば!!なんて、言ったって意味はない。

パラレルワールドに落ちた”私”が結局のところ、似たような選択を続けてしまうように。

過去を振り返っても意味はないのさ、と言っているように思うのです。

最後に

小説とアニメ版では尺の問題で、内容構成を一部変更しているらしいです。(かなり昔に小説を読んだので、記憶が曖昧。)

再度、小説を読んでみようかなと思っています。

差異が発見できて面白いかも。

あとED曲と演出が素敵です。


神様のいうとおり / 四畳半神話体系 ED

このあと、やくしまるえつこさんは売れっ子になりましたよねー。 (え?もっと前から有名?ごめんなさい。にわかなんです。)

ぜひ、興味があれば見てみてください!

あと注意として、結構下ネタを楽しくぶっ込んでくるんで(大学生なんてそんなもんさ!!)、家族で見るとお茶の間が凍るかも(笑)

では、adios!!