仕事を通して、IT技術の進歩は本当に早いことを実感します。
次々に新しい言語、新しい考え方、新しい技術が現れ、そして改良が加えられています。
しかし、それらはあくまでテクニックの話であり、一般の人々にとっては見えない部分の話になってしまいます。
ですが、私はある技術は全ての人に関係があると思っています。
それは、AI(人工知能)です。
今回は、AIについて簡単な解説を行い、私個人の意見を話させてください。
(だって、家族は誰も真剣に聞いてくれないんだもんww)
また、注意点として、私は大学の研究分野がAIではなく、画像処理でした。そして、現在の仕事もAIとは直接的に関わりがありません。
ですから、お話する内容が一部間違っていたり、欠落している場合もあるかもしれません。
その場合はごめんなさい。
先ずは、本の紹介をさせて下さい。
AI(人工知能)の現状と、その仕組みについて分かりやすく解説しています。
もし、AIに興味があれば一度読むことをお勧めします。私も、友人から勧められて読み、話題になっているディープラーニングについて、ある程度の知識を得ることが出来ました。
難しそうな題名ですが、内容はそれほど難しくありませんから安心して下さい。
確かに簡単な理論については書いてありますが、その理論が全て理解できなければならないわけではありませんから。
AI(人工知能)とは何か
AIは 「Artificial Intelligence」の略です。直訳すると”人工的な知性”でしょうか。日本語では人工知能と言う方が聞き慣れているでしょう。(厳密には、AIと人工知能は違うとおっしゃる方もいます。)
さて、この分野の研究は何を目指しているのでしょうか。
それは、人間の脳をコンピュータで再現することです。
人は日々、何かの選択を行っています。そして、それに従い行動しているわけです。それには、何かしらの行動の決定基準や判断基準があるはずです。
これをコンピュータが獲得できれば、人間と同じように物事を判断し、行動を実行することが出来るはずです。
極端な言い方をすると、人の行動はプログラムに全て置き換え可能であり、人工的な脳を創りだすことが出来る。それが究極的な目標です。
AIってSFの世界には良く出てきますよね?
そうですね。有名なAIは、「2001年宇宙の旅」の”HAL 9000”でしょう。彼は、宇宙船のメインコンピュータで船内の制御を全て行っていました。また、自分で判断し物事を実行していました。
では、現時点でそのようなAIは登場しているのでしょうか。
答えから言うと、NOです。そのような”優秀”なAIは誕生していません。
では何故、AIの話題が最近多いのですか?
それには、理由があります。それは、AIの分野で”ある”大きな進歩があったからです。
またそれに伴い、各IT会社はAI研究に本格的に投資を行い始めたのです。
- Microsoft
- Apple
- IBM
- TOYOTA
- 日立
- NEC
- 富士通
挙げればきりがありません。
これら大手企業がAI事業を自ら手掛ける、またはベンチャー起業を買収し傘下に収めるという動きが活発化しています。
そのため、AIに関するニュースが多くなってきているのです。
AIの常識が大きく変わってしまった?!
先ほど述べた、”ある”大きな進歩とはディープラーニングという手法がAIの高度化に有効であると実証され始めたからです。
ディープラーニング?なんだそりゃ。
それは当然の疑問です。でも、とっても身近な話なのですよ?
ディープラーニングとは何だろう?
最近では、Googleの Alpha Go(囲碁用人工知能)が有名になりましたね。
囲碁では、人工知能が人間に勝つのはまだ遠い未来だと考えられていました。しかし、結果は4勝1敗で勝利したのです。
それは今までの人工知能のアルゴリズムと大きく異なっていることが一つの要因です。
それはディープラーニング。
ディープラーニングとは、人の脳のシナプスを模倣した仕組み・アルゴリズムのことです。
ちょっと難しい話になりましたね。でも、皆さんの脳に似た作りになったことがAIの飛躍のポイントになったのです。
人の脳は、ニューロン(神経細胞)と、各々のニューロンを橋渡しするシナプスという物質で構成されています。
シナプスが網目状に、沢山のニューロンとつながっているのです。
ある行動を取るとき、電気的な信号がシナプスを通してニューロンを伝わっていきます。
失敗した時の伝わり方。成功した時の伝わり方。それを覚えると、今後は成功した時の伝わり方を優先するようになります。
これが学習し行動が強化された(行動の成功率が高まった)状態というわけです。
ですから、小さい子供は沢山試して、沢山失敗します。そして、その中から上手く行った事例をつかみとり、その時の方法を優先的に実行することで成功率高める(ニューロンとシナプスの伝達経路を強化する)ということをしているのです。
まさに、ディープラーニングとはそれを模倣しており、何度もトライさせることで自ら成功例をつかみとるというAIなのです。
今までのAIとどう違うの?
ディープラーニングが注目されているのは、”教師なし”学習と分類されるアルゴリズムである点です。
それまでのAIは”教師あり”学習に分類されるアルゴリズムです。(分かりやすいようにかなりざっくりと分けました。詳しくはもっと細かく分類されるようです。)
”教師あり”と”教師なし”って何のことなんでしょう。
”教師あり”学習
”教師あり”学習のAIとは、イメージとしては、全てを教えてくれる先生が必要なAIのことです。
例えば、猫についてAIが判断出来るようにするとしましょう。
”教師あり”学習の場合、猫について細かく教えてあげる必要がありました。
例えば、猫という動物は
- 耳がある
- 目がある
- 口がある
- ひげが横に伸びている
- 丸い顔をしている
- しっぽがある
などを教えこみます。(厳密に言うと、これらの法則をプログラムします。)
では、模様はどうでしょうか。そうですねー。例えば、アメリカンショートヘアーがお家にいたとしましょう。
その場合。
- 模様は黒と灰色のシマシマである
と教えたとします。すると、アメリカンショートヘアーの猫の写真を見せると、AIは「それは、にゃんにゃん!!」と答えます。
少し意地悪して、トラ猫の写真を見せるとどうでしょう。AIは「にゃんにゃん?でも、教えてもらったのと違うから、それ違う・・・」と答えてしまいます。
そこで、猫をもっと正しく判断するためには、猫には模様が色々あって、それにはどんな模様があって・・・
ということを逐一教えてあげる必要があるのです。(ルール化しそれをプログラムします。)
そのため、正しいAIを作るためには、膨大な量のデータをルール化し、そして逐一全て教えこむ必要があったのです。
ですが、これは大変にコストがかかることです。完璧にしようとすればするほど教えることが増えるのです。
耳って何? 目ってなに? 口って何? ひげってなに?
小さな子どもの、なになに攻撃です。これに全て答えてあげる必要があるのです。
”教師なし”学習
これに対し、”教師なし”学習とは、自ら特徴を抽出し学習するタイプのAIです。
同じように、猫について学習させるとしましょう。
このAIに対して、様々な種類の猫の写真を見せるのです。
そして、「にゃんにゃんを描いてごらん!」と命令します。
すると、沢山ある猫の画像を見比べ、”猫”という動物に共通する事柄の抽出を始めます。
猫は・・・
- 耳がある
- 横に伸びたひげがある
- 模様は色々あるらしい
- お尻にはしっぽがついている
- 目がついているらしい
- 口がついているらしい
- おおよそ丸い顔をしている
といった猫の特徴を自ら探し出してくるのです。*1
そうすると、AIの中では猫に対するイメージが出来上がっています。もちろん、「にゃんにゃんを描いてごらん!」と命令すると、自分なりの猫を描いてみせますし、「これは、にゃんにゃんかな?」とトラ猫の画像を見せて答えさせると、「それは、にゃんにゃんだ!」と答えます。
このタイプのAIの一種にディープラーニングがあるのです。
つまり、猫の画像を作り出すために必要な条件を自ら抽出する(擬似的なニューロンとシナプスを作り、猫に近い画像を作れる伝達方法を強化していく)ことが出来るようになったのです。
これは、人間が全ての特徴を教えこむ必要がなくなり、適切なデータを与え続けることで自ら特徴抽出を行い学習を行うことが出来ることを意味します。
AIは我々の敵となるか
ディープラーニングという手法は、AIの能力を飛躍的に向上させました。
そして、何より重要なのは、”自ら学習する”という点なのです。その学習過程によって抽出した特徴は、AI独自に定義したものです。
つまり何が言いたいかというと、人の想像とかけ離れた特徴を抽出する可能性があるという点です。
その一つの例が、Alpha Go の囲碁対決です。第1局で序盤から、Alpha Go は意味不明な手を打ち始めます。誰もその手の意味を理解することが出来ず、Alpha Go が暴走を始めており(バグが発生している)勝敗が決したと確信しました。
しかし、状況が進むうちに、”意味不明”とされていた手が有効な戦法であることが分かってきます。
つまり、今まで人類の誰もそのような戦法を目にしたことも実践したこともなかったがために、それが正しい判断かどうかを見分けることが出来なかったのです。
これは一種の危険さを孕んでいると、私は考えています。
それは、AIがある判断を下した際に、その判断根拠や判断過程を誰も理解できない場合があるということです。
何故、そのような判断をしたかが誰も分からないということです。
膨大なデータの中から抽出した特徴から算出した結果であるため、AIとしては結論が出ています。しかし、人間には何故その答えに行き着いたのかが分かりません。AIに匹敵するほどのデータ量を解析するパワーが、人間にはないからです。
AIが出した答えに対し、「Yes」「No」でしか人間側が答えられない時代が来るのではないか。または来てしまうのではないかという怖さを、私は感じます。
しかしある意味では、実行権限を人間側が必ず持っていれば、かなり優秀な人材を獲得したとも言えます。
様々なデータの分析結果から有効な手段をAIが提示します。それを、人間が実行するかを判断するというわけです。
ただ、少々堂々巡りしている感じはします。
データ分析結果が本当に正しいかをどうやって判断するのか? AIが言うから正しいと信じるのか?
AIの研究は止まらないでしょうし、これからも飛躍を遂げていくでしょう。
私だったら、真っ先に考えるのは都市インフラの中枢にAIを取り付けることを考えます。
スマートコミュニティという言葉が流行りましたが、このスマートコミュニティが出来ることは電力の見える化と家庭の電気制御ぐらいなものです。
でもAIに接続できれば、データ分析した結果、より効率的な電力の配分を提案出来るようになるでしょう。
もっと範囲を広げるのはどうですか? 都市を管轄するAIを置くのです。それに、道路、鉄道、飛行機といったインフラの交通整理を担わせます。
渋滞を無くすための最適解をAIが導き出すのです。
因みに、シンガポールではそのような実験が実際に始まっています。
https://www.youtube.com/watch?v=6h_alzqI94Iwww.youtube.com
AIというと、ロボットを想像するかもしれません。
確かにそれもありますが、私はその方向よりも都市や人を管理するインフラへの適用の方が重要ですし、注意すべきだと思います。
今までは”夢”や”空想”だったAI。しかし、少しずつですが確実に”人類”に近づいています。
そして、どのようにそれを制御するか、または付き合っていくかの術を真剣に考えるべき時代に入ろうとしていると私は思うのです。
本当は、もっとたくさん書きたいことがあります。
IBMのワトソンやMicrosoftのTay、りんな。
これらは、また違ったタイプのAIです。機会があれば、またご紹介しましょう。
*1:厳密に言うと、画像系AIですから猫を動物として認識しているわけではありません。あくまで、画像間の共通点を見出しているのです。ですから、これらの猫のパーツを抽出する前段階として、画像に現れる線やエッジ、また曲線パターン等を抽出します。それらをまとめていき分類化することで猫のパーツとして認識するのです。