(参照:https://f1-gate.com/ferrari/f1_48186.html)
今回は、フェラーリ勢を紹介しましょう!
その前に、PU(パワーユニット)について。
現在のPUを製造しているメーカーは4つ。
- メルセデス
- フェラーリ
- ルノー
- ホンダ
となります。
PUの馬力面で考えると、
- メルセデス
- フェラーリ
- ホンダ
- ルノー
と言われていますが、「メルセデス/フェラーリ」「ルノー/ホンダ」という形で拮抗しています。
そして、全てのPUに所謂「パーティーモード」が搭載されました。
このパーティーモードとは、特殊なPUセッティングで「高出力モード」とも言われます。パワーを得られる代わりにPUに高負荷をかけるため、PUが壊れやすくなります。
常に「パーティーモード」を使用したいのが本音ではありますが、年間を通して3基しか利用できない(厳密には4基目以上利用するとペナルティが発生する)というレギュレーションの中では耐えられません。
よって、タイムアタックでスタートの順番を決める「予選用」として使われています。
数年前からメルセデスが「予選時に驚異的なタイムを記録する」ということから、隠しモードを持っているのでは?と他のチームが警戒し始めました。
メルセデスはPUの耐久性を計算した上で、超攻撃的なPUセッティングを予選時のみ使用。これが周りからは無双状態に見えたので、「パーティーモード」と呼ばれたのです。
いち早く対応したのはフェラーリ。遅れてルノーがモードを搭載(昨年はβ版)。そして、今年からホンダも正式に「パーティーモード」を搭載しました。
メルセデス製PUを利用しているのは、「メルセデス/レーシングポイント/ウィリアムズ」
フェラーリ製PUを利用しているのは、「フェラーリ/アルファロメオ/ハース」
ルノー製PUを利用しているのは、「ルノー/マクラーレン」
ホンダ製PUを利用しているのは、「レッドブル/トロロッソ」
となります。
Scuderia Ferrari Mission Winnow(フェラーリ)
(参照:https://f1-gate.com/ferrari/f1_48172.html)
「Mission Winnow」
それが彼らに課せられた、今年の使命です。
昨年はメルセデスと拮抗し、「優勝出来るのではないか?」とまで復活。
しかしながら、チャンピオン候補のベッテルがシーズン途中からスランプに陥り、且つチーム内でも歯車が噛み合わない状態が発生。
それに追い打ちをかけたのは、フェラーリのCEOを務めていた「カリスマ」である、セルジオ・マルキオンネの急死。
チームは混乱に見舞われ、自滅的にチャンピオン争いから転落しました。
「Mission Winnow」は、タバコ会社のフィリップ・モリス社が打ち出しているスローガン。メインスポンサーでもあります。
現在のF1はタバコ広告を直接的に出せないため、このスローガンを打ち出しフェラーリと共有しています。
SF90
(参照:https://f1-gate.com/charles-leclerc/f1_47929.html)
「SF90」とは、「Scuderia Ferrari」が参戦90周年を記念してのネーミングマシン。
「Scuderia」はイタリア語で「チーム」を意味します。
今年から、マッティア・ビノットがフェラーリの指揮を取ります。
彼は生粋のエンジニア。ここ数年はテクニカル・ディレクターとして技術面の責任者としてチームに貢献。
そして、フェラーリは復活の兆しを見せ始めたのです。
ビノットは、当時の統括責任者であるマウリツィオ・アルバベーネと戦略的方向性で対立。
このままの状態を続けるならば、フェラーリを退職する考えでした。
(ヘッドハンティングの話はありましたが、彼は人生をフェラーリに捧げる決意だったようです。)
フェラーリ上層部は、アルバベーネよりビノットに賭けることを選択。
彼はテクニカル・ディレクターと統括責任者を兼任するという特殊な立場で、フェラーリを導くことになりました。
その初仕事で生み出されたのが、「SF90」です。
公式バルセロナテストでは、順調な走り出し。そして、メルセデスのタイムを余裕の走りで追い抜くことをしました。
今年は勝てる。正に「Mission Winnow」を証明するために生み出されたマシン。
満を持して開幕戦を迎える訳ですが、オーストラリアのサーキットに対応出来ず表彰台に届かないという事態に。
(メルセデスが手の内を隠していたのか?!)
問題は「僅差」で負けたのではなく、数十秒離されるという圧倒的な負けを喫したこと。
通常が公道として使われているバンピーなサーキットで特殊だったというのもありますが、それにしても差がありすぎます。
「SF90」は、エンジンカウル(PUのカバー)がタイトに絞り込まれ、空気抵抗を無くす方向にシャシーが設計されており、一部では「冷却の性能が弱く、パワーを出せないのでは?」との推測がなされています。
一時的な問題なのか・・・それとも根本的にシャシー設計が誤っていたのか・・・
ドライバー
- セバスチャン・ベッテル 「5」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
- シャルル・ルクレール 「16」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
チャンピオン争いをするならば、ベッテル。
そして、フェラーリの中でも「ファーストドライバー」として認識されています。
フェラーリは伝統的に「ファースト/セカンド」を明確に定めるチーム。
今の所、公にベッテルをファーストとして扱うとは名言していませんが、4回のチャンピオン経験があるベッテルを「ファースト」としない訳がありません。
恐らく、序盤はそのような流れになるでしょう。
現に、開幕戦ではレース終盤でチームオーダーが発令され、ルクレールにベッテルを抜かないよう指示が出ました。
(ベッテルとルクレールはタイヤ戦略が異なっており、終盤ではルクレールの方がタイムが速かった。)
ただし、このルクレールが凄まじい男なのです。
昨年は、アルファロメオ・ザウバー(現:アルファロメオ)でF1デビューをし、中団グループを抑え込むという働きをしました。
確かにザウバーの資金調達に目処が立ち、シャシーアップデートによって力があったのは明確なのですが、先輩のエリクソンより数段速いタイムを記録。
セルジオ・マルキオンネは、彼を「フェラーリ入り」させることを望んでいました。
その意向を受け、キミ・ライコネンとスワップする形でフェラーリのシートを獲得。
新人とは思えない落ち着きを持ち、しっかりとベッテルのタイムに匹敵しています。
昨年の途中。ベッテルは自分自身のミスでスランプに陥り、ずるずるとチャンピオン争いから後退。
どうも力み過ぎる部分があるようで、「ここでミスしてはいけない」という所でやってしまうという癖が付き始めました。
ここにフレッシュなルクレールが噛み付いていくのか。
セカンド(後方のマシンを抑えてファーストを援護する)扱いから、すっと入れ替わる可能性は大です。
因みに、ベッテルは自分のマシンに願掛けとして女性の名前を付けることにしています。
今年のマシンには、リーナ(Lena)と命名したようです。
リーナは、メルセデスの「ディーバ」より勝る歌姫になるでしょうか。
Alfa Romeo Racing(アルファロメオ)
(参照:https://f1-gate.com/alfaromeo/f1_47511.html)
ザウバーは資金難に陥っていました。
これによりマシンは開発出来ても、アップデートが出来ないという事態に。
そこでメインスポンサーとして名乗りを上げたのが、「アルファロメオ」です。
セルジオ・マルキオンネは、「アルファロメオ」ブランドをF1に復活させたいと考えていました。
実は、過去にアルファロメオはF1に参戦しており、その中で特にスポーツカーに特化したブランドが「フェラーリ」だったのです。
フェラーリはアルファロメオを倒し、1951年のイギリスグランプリで初優勝を果たします。
「わたしは母親を殺してしまった。」
これは、フェラーリの生みの親である、エンツォ・フェラーリの有名な言葉です。
翌年にアルファロメオはF1から撤退。フェラーリに自らの座を明け渡し、F1で君臨するよう託します。
こうして、アルファロメオのF1での歴史は閉じたのです。
それから約70年の時を経た2018年。アルファロメオはザウバーを支援することを決定。
「アルファロメオ・ザウバー」として再びF1の世界に戻りました。
そして、ザウバーのメインスポンサーであり、フェラーリ・ファミリーにあることを示すため、今年からは正式に「アルファロメオ」の名前で参戦をします。
位置づけとしては、「フェラーリ」のBチーム。つまり、フェラーリのドライバー育成の為にあるチームです。
その為、フェラーリと密接に技術協力をし恩恵を受けています。
ハースもこの形をとっていますが、あくまで「独立系」であることを主張。フェラーリ・ファミリーではないとしています。
この点が、アルファロメオとの大きな違いです。
C38
(参照:https://f1-gate.com/raikkonen/f1_47642.html)
なぜ「C」なのか。
それは、ザウバーの創設者、ペーター・ザウバーが関係してきます。
ザウバーは伝統的に、「C」に続けてナンバリングしてきました。
ペーター・ザウバーの妻である、クリスティーヌ (Christine)の頭文字からとっています。
現在も、ザウバー・モータースポーツAG社が運営を行っていますが、多くのフェラーリ技術者が移籍し支援を行っています。
しかし、ザウバーの系譜をマシンネーミングには残してくれた。
それはとても嬉しいことです。
「C38」は久しぶりに全力投球で設計が行われたマシンです。何しろ、資金難でそれどころではありませんでしたから・・・
確かに、出来るだけパーツをフェラーリと共通化してコストダウンや品質向上をしています。
恐らくは、フェラーリとデータを共有し、開発効率の相乗効果も得ているでしょう。
しかし、フェラーリのカラーリングを変えただけか?と言われると、それは全く違います。
フェラーリから移籍してきたエンジニアの意欲作となっています。
ビノットとは異なるコンセプトを打ち出しているのです。
今年は特にそれが濃く出ており、ハースがむしろ「SF90」寄りになっているのに対し、レギュレーションに対し「C38」は異なる解を出してきました。
フロントウィングはそれの最たるもので、他のチーム(フェラーリを含む)がそれを見た時に、自分たちに取り入れた程です。
ある意味、フェラーリのエンジニア達の腕を磨くチーム。そしてマシンとなっていくのでしょう。
ドライバー
- キミ・ライコネン 「7」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
- アントニオ・ジョビナッツィ 「16」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
「アイスマン」と呼ばれる男。
それが「ライコネン」です。
何しろメディア嫌い(喋るのが苦手)で、リップサービスはなし。
「俺のドライビングで判断しろよ。」というスタンス。
39歳という、今のF1では最年長ドライバーです。
昨年までは、フェラーリでベッテルと組んでいました。
ライコネンはチャンピオン経験者です。現在も安定な走りをし、フェラーリでは2位や3位を着実に捉えていました。
ベッテルがミスをし、挽回するため猛烈に追い上げをしている際に、チームオーダーが出て「ベッテルが迫ってきているから。」と無線。
ライコネンは、「え?だから何?ちゃんと言えって。」
エンジニアはたじたじ。「ほら・・・ベッテルのほうがタイムが速いから。ね?」
ライコネンは業を煮やし、「ベッテルを前に行かせろという意味なら、そう言えよ!」とバッサリ。
まぁ、チームオーダーに従ってベッテルに前を行かせたので、そこは年長者。しっかりしてます。
ベッテルと誰を組ませるか。それはそれはフェラーリ内部で大問題になりました。
「安定した成績を残しているライコネンでいいんじゃないか?」「いや、勢いのあるルクレールに経験を積ませるべきだ!」
フェラーリが内部分裂を起こすのでは?と言われたほど。しかし、生前のセルジオ・マルキオンネの意向を汲み取り、ルクレールを選択。
ライコネンは直ぐに、自らアルファロメオと交渉を始めました。
アルファロメオは、旧ザウバー。ライコネンがF1デビューを果たしたチームです。
スタッフたちは大喜び!「おかえり!ライコネン!」というボードまで作って、ライコネンをアルファロメオに迎えました。
今の彼は、純粋に「レース」を楽しんでいるようです。
若干、居心地悪そうなのはフェラーリの育成ドライバーである、ジョビナッツィ。
なにしろ、「まだチャンピオンを狙えるかも・・・?」というポテンシャルを持っているライコネンが相棒です。
ジョビナッツィはイタリア人。フェラーリはイタリアのメーカーですし、アルファロメオも同様です。
フェラーリとしても期待しているわけです。
しかし、ここに来て「ミック・シューマッハ」の存在が・・・
ミックは、皇帝との異名をもつ伝説のドライバー「ミハエル・シューマッハ」の息子。
そして、父親親譲りのカリスマ性を持つ男であり、着実に下位カテゴリーで成績を残しています。
ライコネンが引退したら、ミックと組むことになる?
いや・・・もしかしたら、ちゃんとアルファロメオで印象付けないと、自分がミックと交代?
なんとも頭が痛いジョビナッツィ君です。
最後に
今回は、フェラーリ・ファミリーをご紹介しました。
フェラーリは、すくすくと育成ドライバーが育っている感じです。
かなり手厚く面倒を見ます。
また、今年はアルファロメオの存在も大きいでしょう。
アルファロメオからのフィードバックが、打倒メルセデスを実現させるキーになるでしょうし、アルファロメオが強くなるということは、フェラーリにとって最高のドライバーがいつでも確保出来るということ。
しかし、上手くフェラーリに乗せてあげないと、いつのまにかアルファロメオがフェラーリを上回ることがありえるの・・・かも?
アルファロメオは、いつからとは言っていませんが独自のPUを開発する意欲もあるとのこと。
2021年のレギュレーションによっては、アルファロメオ製PUが登場するかもしれません。
先ずは今年の動向を注視してみましょう。
それでは、今回はこの辺で。
adios!!