(参照:https://f1-gate.com/renault/f1_47794.html)
今回ご紹介するのは、ルノーとトロロッソです。
ルノーは2016年にワークスチームとして復活。
それまではワークスから離れ、レッドブルに対して主にPU(パワーユニット)を提供していました。
しかしながら、ハイブリッドエンジンに移行してから馬力不足が顕著に現れ、なんとかレッドブルは3強の中にいたものの、「ルノー製PU批判」が多くなりました。
公式の会見でもバチバチの罵倒合戦となり、「ならばワークスとして復活する」と宣言。
ロータスというレーシングチームを買収し、ワークスチームとして「打倒レッドブル」を掲げているのです。
(実は、その当時のロータスは過去のルノーワークスチームを前身としています。なかなか分かりにくいですね(笑))
上位の3強に割って入る。これがルノーの宿命でもあります。
前回は、その3強のうちの一つであるフェラーリを紹介しました。
Renault F1 Team(ルノー)
(参照:https://f1-gate.com/photo/f1_47297.html)
どのチームも上位を目指していますが、ワークスチームは特に上位にいなければなりません。
なぜなら、「純正」であるため。
メルセデス、フェラーリは共に自前でシャシーとPUの開発を行っています。
鍵を握るのはPU。そして、そのPUに最適なシャシーをいち早く設計出来るというメリットもあります。
レッドブルはホンダ製PUを搭載していますが、ホンダはレッドブル・ファミリーにしか提供していません。
よって、レッドブルは事実上「ワークスチーム」としての特権を得ているのです。
F1には、ワークスチームとカスタマーチームというものがあります。
ワークスとは、PUを開発しているメーカーがチームを運営しています。
カスタマーとは、PUを購入契約し、自分たちのシャシーに取り付けて走らせるチームです。
それぞれのPUのデータは、(恐らく)PUメーカーに提供されています。そのフィードバックによって、PU開発を更にプッシュしていくためです。
カスタマーが多ければ多いほど、ワークスにとって強力なPUの開発になり、そのPUがカスタマーに反映される。
そのような構図となっています。
ただし、問題となるのはカスタマーは「使用する立場」であるということ。
新しい機能が実装されても、まだ開発段階なのでワークスで試験的に利用することに留めたり、収集したデータの分析結果が返ってくることもありません。
「はい。出来ましたよ。用法用量を守って使って下さい。」というお達しと、それを支援するエンジニアが派遣されるという形です。
開発方針に口出しは出来ないということ。これがルノーとレッドブルの関係を悪化させました。
レッドブルはルノー製PUを搭載していた時には、ある程度は口出しが可能でした。
しかし、ルノーがワークスチームを運営することで、レッドブルからの意見をシャットアウト。
挙げ句には、「文句を言うなら購入しなくてもよい。購入したとしても『ルノー』の名前を出すな!」と抗議しました。
よって、レッドブルは2017年と2018年に「タグホイヤー製PU」(タグホイヤーは時計メーカー)ということで登録。
中身はルノーですが、タグホイヤーのバッチを付けて走行させました。
ルノーはワークスチームの中では小規模なチーム。それは、会社の予算が割けないという事情があるため。
それでも、なんとかFE(フォーミュラE)から元F1チャンピオンであるアラン・プロストを呼び戻して、チームの再構築をしています。
「安定してトップを目指せるようになるには、最低でも3年かかる。」とプロストは強調。
その時間が経過し、ルノーは3強への復活を求められています。
R.S.19
(参照:https://f1-gate.com/renault/f1_48211.html)
2016年のレースは、無理がありすぎました。
ロータスを買収することが遅れ、シャシー開発まで手が届かなかったのです。
この年は、2015年にロータスが使用していたシャシーをレギュレーションになんとか合わせて、そこに新型ルノー製PUを無理矢理に突っ込むということをしました。
シャシー設計まで関与出来るようになったのは2017年以降。
徐々にですが、力を蓄えていきました。
2019年の「R.S.19」の使命。それは「中団グループを支配する」こと。
そして、3強の中でも「レッドブル」に傷を負わせること。
(これは、個人的な恨みもありますが、レッドブルが3位に位置していることから妥当な選択でもあります。)
レッドブルがルノー製PUからホンダ製PUにチェンジすると決定した際には、PU開発責任者であるシリル・アビデブールが「後悔させてやる!」と対抗心をあらわにしました。
彼らの中では「ホンダに負けてはいない」という自負があるのです。しきりに「今年のPUの馬力は、過去最大の増加幅である。」と言っているのは、その表明でもあります。
しかし、証明する手段はルノーが活躍することしかありません。
結果はと言うと・・・不明。
一つには、中団グループのタイムが密集し、且つ上位チームとの差も縮み始めたことです。
少しでも予選でドライバーがミスをすると、スタートポジションが5つくらい下がります。
何しろ、0.0X秒の単位でラップタイムが競われている状況だからです。
二つめとして、ルノー製PUに信頼性問題が出ていること。
そもそもの話。完走出来ていないのです。
いい感じにポジションアップしたのにいきなりPUから火が出たり、電気系統がシャットダウンしPUが停止したり・・・
その他にも、バトル中にシャシーが破損して走行不可能になるなど。
予選で圧倒的なタイムを出せればバトルでの破損リスクは下げられるのですが、この時点で優位に立てていないことに加えて、PUの信頼性がダウンしていることが追い打ちをかけています。
3強までの道のりは長い。
ドライバー
- ダニエル・リカルド 「3」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
- ニコ・ヒュルケンベルグ 「27」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
2019年のドライバーが確定するのに時間を要した発端は、「リカルドの電撃移籍問題」があったから。
彼は、レッドブルのドライバーであり、2019年も継続すると思われていました。
リカルドはレッドブルで2019年用のプロモーション等も撮影した後で、契約更新のサインをすることだけが残っていたのです。
リカルドとしては、年齢的にもチャンピオン争いが可能なメルセデスかフェラーリに移籍をしたかった。
しかしながら、彼らには既に盤石なドライバーの体制が出来ていて、シートの空きが無かったのです。
よって、3強の一角である「レッドブル」に残留すると、誰もが思っていましたし、レッドブルの統括責任者であるクリスチャン・ホーナーも疑うことはありませんでした。
それが、サインする予定日の数日前に電話で「ルノーと契約する」と言い出したからびっくり仰天。
(ホーナーはリカルドの、お得意なジョークだと思っていた。)
リカルドとしては、レッドブルの「広告塔」として活動することに疲れていたらしく、またホンダ製PUがどれほどのポテンシャルを持っているのか未知数だったので、ずっと乗ってきたルノー製PUが良いと判断したようです。
さて、チャンピオン争いを希望していたリカルドなのですが、ルノーからは「それは、このチームでの現実的な目標でない。」と言われていたそうな。
それでも、環境を変えたいと思いルノーに移籍しました。
(これを機に、ドライバーのシート玉突き事故や争奪戦が繰り広げられることになりました。)
ルノーからすれば、レッドブルの安定的なポイントゲッターを確保出来たのは嬉しい誤算。
また、発展途上にあるチームに対して、その知識をフィードバックして欲しいと考えています。
彼とタッグを組むのは、ニコ・ヒュルケンベルグ。
ヒュルケンベルグは不名誉な記録を更新中。
それは、「表彰台に上がったことがない最長記録を持つドライバー」
(尚、この記録は更新中)
誰もが彼の速さやテクニックを認めています。
しかしながら、「勝てるマシン」に乗ったことがない。
この記録が更新され続けているということは、ヒュルケンベルグがF1ドライバーとして相応しいことを証明しています。
なぜなら、結果が出せなければ解雇され、ペイドライバー(大きなスポンサーが付いてくれているドライバー)でも資金力が衰えれば解雇される。
つまり、F1でドライバーとして長く生き残るのは本当に難しいことなのです。
今年こそは、彼にせめて3位の表彰台に上がらせたいところです。
Red Bull Toro Rosso Honda(トロロッソ)
(参照:https://f1-gate.com/honda/f1_47587.html)
トロロッソの使命。
それは、「将来のレッドブルでのF1チャンピオンを育成する」こと。
そのために立ち上げられたチームです。
前身はミナルディというチーム。これを買収して引き継ぎ、若手がチャレンジを行うチームとして存在します。
トロロッソが先行してホンダ製PUを搭載していましたが、レッドブルもホンダ製PUを搭載することになり、レギュレーションで許可されている部分ではシャシー部品の共通化をすることにしました。
昨年までは、ジェームス・キーがテクニカル・ディレクター(技術統括責任者)として居ましたが、部品共通化により「トロロッソの独自色」が失われることを嫌がりました。
結果的に、ジェームス・キーはマクラーレンに移籍。
その後、トロロッソは明示的な「テクニカル・ディレクター」は置かないことになりました。
(レッドブルのテクニカル・ディレクターは、エイドリアン・ニューウェイです。)
「Toro Rosso」とは、イタリア語で「Red Bull」の意。
昨年から「Red Bull」を追加して、レッドブル・ファミリーであることを強調した名称となりました。
STR14
(参照:https://f1-gate.com/tororosso/f1_48014.html)
シャシーのベースは、昨年のレッドブルマシン「RB14」となります。
もちろん、「RB14」はルノー製PUを載せていたので、これをホンダ製PUに適合出来るようにアレンジを加えています。
そして、レギュレーションへの解として、フロントウィングはレッドブルとは異なる答えを導き出しました。
2019年はトロロッソにとって、安心して開始出来るシーズンとなりました。
いくらレッドブルからの補填があるとはいえ、トロロッソは財政的に強いとは言い難いチームです。
しかし、昨年は唯一のホンダ製PUを搭載し、夢の「カスタマーチーム」となったのです。
今年は、レッドブルとトロロッソでホンダ製PUを共有しますが、ホンダは「レッドブルとトロロッソを平等に扱う」ことを約束しています。
継続して「カスタマーチーム」でいることが出来るのです。
ホンダ製PUの扱い方は、レッドブルより先輩。
そして、昨年のシャシーでは最強であった「RB14」をベースとし、レッドブルテクノロジー社製のパーツを多数利用可になったことで、シャシー品質も向上しています。
パーツ共有が出来なかった理由として、過去は搭載するPUメーカーが異なったという事情がありました。
ある年はルノー製PUだったり、次の年は型落ちのフェラーリ製PUだったり・・・
しかも、「何のPUを使うか」が決まるのが遅く、いつも政治的な部分で翻弄され続けるチームでした。
PUが決まらなければ、シャシーの肝心な部分が設計出来ません。
よって、毎年が突貫工事。
ある意味では、「最短で、ある程度のポテンシャルを発揮できるマシン」を作ることは得意としていました。
それが、ホンダ製PUを安定的に供給してもらえることになり一変!
かなり早い段階で、次期マシンの開発にリソースを割くことが出来るようになり、レッドブルと協調して情報交換が出来るようになりました。
トロロッソを統括するのは、フランツ・トスト。
彼は、第3期ホンダF1時代のエンジニアでもありました。
なので、ホンダとの仕事の仕方について熟知しており、ホンダがマクラーレンから提携を解除された際に、「我々と組もう!」と声をかけてくれた人物でもあります。
昨年は、戦略として次から次へとPUのアップデートを強行。
それにより3基制限を超えることになり、ペナルティによるスタートポジションのダウンが何度もありましたが、その度にホンダ製PUは洗練されて行きました。
今年の公式バルセロナテストでは、トラブルフリー。
そして本戦では、まさかのレッドブルを押さえ込むことまでやってのけています。
ドライバー
- ダニール・クビアト 「26」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
- アレクサンサー・アルボン 「23」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
クビアトは、一時はレッドブルまで上り詰めた男。
しかし、あまりにクラッシュが多いので、トロロッソに戻るよう言われました。
その後もスランプは解消されず、結果的にレッドブル育成プログラムから外されて解雇に。
昨年は、フェラーリの開発ドライバーとして修行を積んでいました。
リカルドがルノーに移籍することになり、ガスリーがトロロッソから昇格。
昨年は、ガスリーとハートレーという組み合わせだったのですが、ハートレーは思うように結果が出ませんでした。
レッドブルの意向により、ハートレーは解雇。でもガスリーはレッドブルに召し上げられちゃった。
ドライバーが0人!なんてことに。
そこで白羽の矢が立ったのが、フェラーリに居たクビアト。
他のチームを経験して、少しは落ち着いただろうということで「呼び戻し」をしました。
アルボンは昨年のF2で3位の成績を納めた人物。
彼は、「タイ」と「イギリス」の両方の国籍を持っています。
レッドブルの創業者はタイ人。
このことから、実力は言うことなし、そしてレッドブルのイメージにぴったりであるとのことで獲得を目指しました。
しかし決定するタイミングが遅く、2019年のF1ドライバー候補として名前がなかったアルボンは、FE(フォーミュラE)の日産e.damsと契約済。
でも強引で有名なレッドブル。
「F1に乗ってみたいだろう?」とアルボンに迫り、日産e.damsには違約金を払うので契約解除をするように交渉。
日産としては、「いきなりしゃしゃり出てきて、何を言いやがる!」状態でしたし、F2まで面倒を見てきたのは、日産と提携していたe.damsでした。
でも、アルボンはF1に乗るためにF2で頑張ってきたのもあり、最後には子供の夢を応援するということで、日産e.damsはアルボンとの契約解除を了承しました。
クビアトもアルボンも、色々な気持ちや期待を背負って、トロロッソで成績を残せるよう奮闘しています。
最後に
とにかく、「ルノー VS レッドブル」がとてつもないことになっています。
煽りを食らって、姉妹チームのトロロッソは然り、他のチームを巻き込んでの大乱闘。
事件はコース上だけじゃないんですねぇ。
F1は昔から「政治色」が強い傾向があります。
交渉力によって補助金や、自分たちに都合の良いレギュレーションに引き込んだりと、あれやこれや・・・
確かに「純粋にレースを見たい」との意見もありますが、ある意味ではこれはこれで面白い要素でもあります。
では、今回はこの辺で。
adios!!