(参照:https://f1-gate.com/williams/f1_47238.html)
紹介も最後となりました。今回は、ウィリアムズとレーシングポイントのメルセデス勢です。
ウィリアムズとレーシングポイント。
どちらも、メルセデス製PU(パワーユニット)を使用しています。
所謂、カスタマーチームです。
しかし、メルセデスは明確な「Bチーム」を持っておらず、ウィリアムズとレーシングポイントは各々が「独立系」と呼ばれるチームです。
(一応は・・・)
ウィリアムズは幾度もチャンピオンを輩出してきたチーム。
マクラーレンと共に老舗なのですが、今や「古豪」と言う意味は「いつまでも寝てる獅子」に変化しつつあります。
レーシングポイントは、色々な意味で注目を浴びるチーム。
なんと・・・昨年はドライバーが給与不払いの裁判を起こし、「破産申請」に誘導するウルトラC級技でチームを「存続させる」という、摩訶不思議なことまで起きました。
今年はどうなることやら?!
ROKiT Williams Racing(ウィリアムズ)
(参照:https://f1-gate.com/renault/f1_47608.html)
フランク・ウィリアムズとパトリック・ヘッドによって生まれたチーム。
それが「ウィリアムズ」です。
アイルトン・セナが最後に在籍したチーム(レース中にウォールに高速でヒットし亡くなってしまう)としても有名です。
現在はフランク・ウィリアムズの娘であるクレア・ウィリアムズが副代表を務めています。
しかし、フランクは第一線からは引退している状況ですので、ここ数年はクレアが実質的なチーム代表兼オーナーです。
ウィリアムズが現在どのような状態なのか。
「圧倒的な最下位」
幾度もコンストラクターズタイトルを獲得し、チャンピオンを輩出したチームが、なぜここまで落ちてしまったのか。
そこには「チームとしてのあり方」がどうやらあるらしいのです。
フランクはトップダウンの指揮系統を好み、ワンマンなチームの率い方をしました。過去に在籍していたラルフ・シューマッハは、「不安と恐怖による統治」と表現。
確かに強いリーダーは必要な側面ではありますが、チームとしての結束力も大事です。
この「結束力」を維持させていたのは、技術責任者兼創業者であるパトリック・ヘッドによるものだったのです。
パトリックは2012年でウィリアムズを去りました。
そして、この数年でフランクからクレアにスイッチしたところ求心力は更に低下。チームが団結出来なくなりました。
クレアはフランクの運営方針を継承していて、且つフランクほどのカリスマ性がない。
それが低迷の結論の行き着くところでしょう。
メルセデスのシャシー設計責任者であった、パディ・ロウをヘッドハンティングし昨年のシーズンから登用。
しかし、彼をもってしてもチームの混迷は解決せず、「過去最低のマシン」を世に送り出すという失態を犯しました。
今シーズンに入る前に、「休暇」という体でパディ・ロウを事実上の更迭。
なぜ「休暇」なのか。それは、ウィリアムズの株をパディ・ロウが保持しており、それを買い戻す程の資金がないため。
チームとしての混迷に財政的な打撃。ウィリアムズ存続の危機が迫っています。
パトリックが8年ぶりに復帰するとのことで、ウィリアムズは「最後の一手」の賭けに出ました。
FW42
(参照:https://f1-gate.com/kubica/f1_48020.html)
今シーズンは、カラーリングを一新。
紺色のストライプが近年のウィリアムズのトレードマークでした。これに、メインスポンサーであるマルティーニがブルー&レッドのストライプを入れていました。
昨年の低迷を機に、マルティーニはメインスポンサーから撤退。
今年は、アメリカのROKという会社のIT部門である「ROKiT」がメインスポンサーに。
ホワイトをベースとし、グラデーションでブルーが入ったカラーリングになりました。
昨年からパディ・ロウがシャシー設計を行っており、今年も継続。
斬新なアイデアを幾つも取り入れており、かなり挑戦的なマシンとなりました。
(レギュレーション違反として、後に却下されたパーツもあります。)
マシンがどれほどのポテンシャルを持っているのか。
それは「誰も分からない」というのが本音です。
なぜなら、スペアパーツの生産が追いついていないから。
そもそも、新車発表にマシンが間に合わないという事態が発生し、そのまま公式バルセロナテストに突入。
8日間の日程のうち、最初の2日間はガレージにマシンすらないという状況へ。
その後、やっとシェイクダウンを開始。シェイクダウンとは、初走行のこと。
通常ですと、公式バルセロナテストよりずっと前にシェイクダウンは実施されます。公式テストはシーズンに向けてデータを取得する為にある期間で、「ちゃんと走れるのか?」という状態で突入する期間ではないのです。
公式テストで取得したデータを元に、シーズンのセットアップやパッケージ(シャシー+PU)開発の戦略を練るのですから。
さて、FW42に話を戻しましょう。スペアパーツの生産が追いつかない状況であるため、「全開走行」が出来ない状態にあります。
公式バルセロナテストでは、走行中にパーツ破損が発生したら昨年のパーツで応急処置を行うなど、正確なデータ取得が出来ないという結果に。
これにより、マシンはどのような特徴を持っているのか理解出来ないままシーズンに入り、スペアがないためにレース中も「安全走行」を強いられています。
また、2台のマシンに同じセットアップを行っても、挙動が一致しないという現象まで発生。
どこから手を付けたら良いのか・・・
他のチーム全てが、「最下位のマシン」と考えており、闘う相手ともみなしていません。
パトリック・ヘッドが加入し、これを打開出来るのか?
なぜ、このようなメチャクチャな運営体制になっているのか?
マシンの本領発揮はいつになるのか?
誰も分かりません。
ドライバー
- ロバート・クビサ 「88」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
- ジョージ・ラッセル 「63」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
ロバート・クビサは選手生命の危機に瀕する程の大事故を、2011年のラリーでしてしまいます。
正に、F1で「これから伸びていく選手」と誰もが考えていた時のショッキングな出来事でした。
その事故直後は、右手はほぼ使えない状態に。
それを努力で私生活が出来るほどまでに復活させ、F1のドライビングでは左手のカバーリングで対処させるなど、他のドライバーとは大きく異なるドライビングアプローチの試行錯誤によりF1に舞い戻ってきました。
本当にF1を運転できるのか?
昨年はウィリアムズでリザーブドライバーとして契約。
新人に近いドライバーの体制だったのですが、テスト走行でクビサは、その2人に匹敵あるいは超えるタイムを叩き出します。
今年はしっかりとスポンサーも確保し、堂々とF1に凱旋。
様々な意味で応援したいドライバーの一人です。
ジョージ・ラッセルは、昨年のF2チャンピオン。
今年のF2からの昇格組は、マクラーレンのランド・ノリス(2位)、トロロッソのアレクサンダー・アルボン(3位)、そしてウィリアムズのジョージ・ラッセルとなります。
真っ先にシートを掴み取ったのは、ジョージ・ラッセルでした。
その方法が画期的。
どのチームの席も不確定な状態だったので、一番にシート獲得の確率が高いウィリアムズに自分を売り込むスライドを作成し披露しました。
この度胸やアグレッシブさに高評価を下したウィリアムズは、ラッセルと契約することにしました。
しかし、掴んだ場所が悪かった・・・
復活しつつあるマクラーレン。ホンダとの2年目により安定性と向上性を見せるトロロッソ。
なのに、昨年よりも混乱を起こしているウィリアムズ。
F2チャンピオンが、最下位に位置するという悲惨な状況にあります。
彼らは多くの「制限」が課せられている中で、最大限のプッシュを続けています。
クビサの経験と、次世代のリーダーであるラッセルによって、ウィリアムズは輝きを取り戻せるでしょうか。
SportPesa Racing Point F1 Team(レーシングポイント)
(参照:https://f1-gate.com/racingpoint/f1_47843.html)
昨年までは、「フォースインディア」という名前でエントリー。
しかし、フォースインディアは資金難やチーム代表のビジェイ・マリヤが詐欺罪で訴えられるなど、問題が多発。
スタッフに不払いが発生し続けており、スタッフからの強い要望でドライバーであるセルジオ・ペレスが給与不払いの法的処置を裁判所に訴えるということに出ます。
これにより、「フォースインディア」は破産手続きに入り、チームを差し押さえにすることで「存続させる」という技に出ました。
この間に、次の買い手を得られればチームは所有者を変更するだけで済み、スタッフの解雇がされないという寸法です。
つまり、チームが破壊されないよう、敢えて破産申請のプレッシャーをかけて差し押さえの対象としたのでした。
この方法が使えたのは、なにより「フォースインディアが強かった」ということ。
そうでなければ買い手が現れません。
そして、資金難が表に出てきた際に、買い手候補が幾つも出てきたこと。
これが決定打でした。
ここにカナダの大富豪。ストロール家が関係してきます。
ウィリアムズを支援していたローレンス・ストロール。
それは、彼の息子であるランス・ストロールが在籍していたためです。
しかし、ウィリアムズは低迷期にはまり込んでしまい、ウィリアムズを支援するだけではランスに環境を整えられないと判断しました。
そこで、共同出資者を募り、昨年のシーズン途中でフォースインディアを買収。
「レーシングポイント」として登録のし直しを行いました。また、スタッフへの不払いを一気に精算したのです。
今年はランスが、ウィリアムズからレーシングポイントに移籍することになりました。
(これは既定路線ですね。)
もちろん、「英雄」であるペレスも残留。
しかしこれにより、エステバン・オコンのシートは非情にも失われました。彼は若く、次世代のF1を牽引するドライバーとして期待されていました。
チーム事情が事情なので、オコンはしかたなくF1を去ります。オコンはメルセデスの育成ドライバーであり、メルセデスがなんとか別カテゴリーで温存させている状態です。
レーシングポイントは元をたどると、ジョーダンというチームに行き着きます。
オーナーが変わっていき、スパイカーという名前になったり、フォースインディアとなったり。
ベースを見ると、意外と長く存在するチームです。それがハースとは異なる点ですね。
RP19
(参照:https://f1-gate.com/racingpoint/f1_47937.html)
フォースインディア時代は「VJM」と名付けていましたが、レーシングポイントから「RP」に変更。
しかし、「鼻孔ノーズ」は健在です。
不思議と他のチームはこれを採用しないのですが、フォースインディアを受け継ぐレーシングポイントの特徴です。
ノーズに2つの明らかな「穴」が空いており、ここに前方の風を入れて制御していると思われます。
ノーズの中身はどうなっているのか・・・?これは謎だらけです。
ですが、「コブラノーズ」と言ったり、「鼻孔ノーズ」と言われたりますが、採用し続けているところを見ると、これを軸としてシャシーの最適化を図っているのでしょう。
最初は完全なる「穴」が出来ていましたが、今は「フォーク」のような形状をしています。しかし、よく見てみるとフォークの隙間は「穴」となっており、「鼻孔ノーズ」の正当進化版となっています。
2017年からピンクを基本色とする、ビックリするカラーリングとなりました。
これは、大口のスポンサーとしてオーストリアの飲料水メーカーである「BWT」のカラーです。
ドライバーのペレスでさえ冗談で、「このピンクのマシンに抜かれるのは嫌だろう? だから他は頑張るしかないね!」と言っていました。
中団の中でトップだったのは、フォースインディアだったのですが、徐々に資金難の苦しみなのか結果が落ち始めました。
今年は、潤沢なマネーリソースによる定期的なシャシーアップグレード。そして、新しいファクトリーの建設が検討&開始されるなど、ガラリと環境が変わり、余裕さえ生まれています。
マシンの結果としては、まぁ・・・順当。
本当に「真ん中」に位置している感じです。
しかし、定期的なシャシーアップグレードで化けるとチームは意気込んでいます。
ドライバー
- セルジオ・ペレス 「11」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
- ランス・ストロール 「18」
(参照:https://f1-gate.com/team/)
今年から、レーシングポイントと名前が変更になりましたが、フォースインディアを継承しているのは明白。
スタッフが大幅に変更されていることもなく、寧ろスタッフを増員しています。
ドライバーはと言うと、セルジオ・ペレスが残留。
ランス・ストロールが新規加入となります。
フォースインディア時代は、とにかくドライバーの仲が悪いことで有名なチームでした。
昨年は、セルジオ・ペレスとエステバン・オコンがタッグを組みましたが、オコンが無線で「ペレスは僕を殺そうとしている!」と叫ぶほど。
同士討ちを何度も行うので、チーム代表はカンカンに怒り「前後がフォースインディアになったら、追い抜きは禁止だ!」と正式なチームオーダーとして発令される事態に。
ペレスはドライビングが「俺様主義」なところがあり、「チームドライバーはライバルであり、勝つべき対象である」という認識の持ち主。
相手を威嚇するドライビングをして抜きに行ったりし、それを避けた仲間はウォールに衝突なんてことも多々ありました。
ですが、今年はチームオーナーのローレンス・ストロールの息子とタッグを組みます。
彼の「俺様主義」が通じるのか?
ランスを危険な行為で場外に飛ばしたりしたら・・・自分の首が場外に・・・なんてこともありえます。
今のところは大人しくしているペレス。
ランスに対しても、「彼はとても速いドライバーだ。」とコメントしています。
ランス・ストロールはF1デビューして3シーズン目。
ウィリアムズに在籍していましたが、あまり良い結果が出せていません。
新人デビューは引退を強制撤回させられたフェリペ・マッサと組み、マッサはF1について色々とランスにアドバイスをしていました。
(もちろん、マッサの方がランスよりも好成績を残しています。)
翌年、マッサはやっと引退が出来ましたが、その後のランスの発言は「マッサから学ぶことは何もなかったよ。」とのこと。
なかなかの、「やんちゃボーイ」です。
2年目は、新人のセルゲイ・シロトキンと組みました。しかし、マシンが酷かったこともあり、シロトキンより前にはランスが走行しているという感じ。
ランスが本当に「F1ドライバーとして適任なのか?」という疑いの目は払拭出来ていないのが実情です。
何より、ウィリアムズは資金難にあり、所謂「ペイドライバー(ドライバーにスポンサーが付いており資金援助してくれる)を雇っている」との非難が多かったからです。
シロトキンにはロシア系のスポンサー。ランスにはストロール家が付いていました。
今回は、レーシングポイントを買収し、「チームごと」支援してくれる体制に。
さて、ランスが好成績を残せれば良いのですが、ペレスに圧倒的に差をつけられた時に、「ランスを交代させよう。」という意見がだせるかと言うと・・・出せないでしょう。
ランスはある意味では内部からプレッシャーを受けずに、ドライビングすることが可能です。
それは、彼にとって「良い環境」と言えるのか。
とにかく、結果が出せれば何も問題は発生しないのですが・・・
最後に
ウィリアムズとレーシングポイントは、各々が独立系のチームとして活動しています。
しかし、そこにはマネーによる複雑な絡み合いが発生していたのでした。
ウィリアムズはストロール家の援助がなくなったために、スポンサー獲得に四苦八苦していますし、レーシングポイントはランスをどのように扱うかが問題でしょう。
また、今年はどちらもマシン戦闘力を序盤で落としているというのがあります。
公式バルセロナテストでも、良い面で目立つことはありませんでした。
今まではメルセデス製PUに頼った、パワーで押し切るマシンにすることも出来ました。
ですが、フェラーリ製PUの能力が格段に上がり、メルセデス製PUを超えてしまったのでは?との話が公式バルセロナテストで噂され、レースでも証明されつつあります。
(信頼性の問題や冷却系トラブルが発生して、思ったようにポイントを取れていませんが・・・)
そうなると、「シャシー」の能力で対抗するしか無いわけですが、メルセデスのようにマッチしたシャシー開発が進んでいるかと言うと、それも言い難いところです。
レーシングポイントは、マシンの素性は良いとの評価が以前からあります。
ただ、周りのチームの開発が思ったよりも前進したということでしょうか。今年は光るシーンが出てこない。
シーズンは長いですからね。どこで化けるかは分かりません。
昨年は、シーズン中にアルファロメオ・ザウバー(現:アルファロメオ)が大化けしました。
それを楽しみにするのも良いですね!
それでは、今回はこの辺で。
adios!!