今回は、SIer業界のお仕事をテーマにICT用語解説をしようと思います。
内容的には上の記事の方が充実しているかも知れません(笑)
SIerのお仕事の恐ろしい実情を知ることができます。
また過去にこんな記事も書きましたので、参考までに。
SIer業界の現状についても書いています。
とにかく、就活の時に苦労した記憶があります。SIerってなんなんだよ!ってね(笑)
SIerとは何か?
ICTの力で問題解決を行う業種をSIerと言います。
大規模な案件は、大手SIerがICT事業の仕事の元請けになることがほとんどです。
SIerにも色々あります。
メーカー系
メーカー系とは大手電気メーカーのITを担う部門、及びそれに特化した子会社などを指します。
- 日立製作所
- 日立ソリューションズ
- 富士通
- 富士通マーケティング
- NEC
- NECソフト
など
ユーザー系
ユーザー系とは、どの会社にもIT部門があると思うのですが、それを切り離し子会社化したものです。
- 野村総合研究所
- 三菱UFJインフォメーションテクノロジー
- 東京海上日動システムズ
- テプコシステムズ
- 伊藤忠テクノソリューションズ
- 新日鉄住金ソリューションズ
など
独立系
独立系とは、メーカー系子会社ではなく、独自でSIerとして会社を創立し発展させてきた会社です。
- オービック
- IIJ
- 富士ソフト
- TIS
など
他には?
よくこの3分類に分けられるのですが、この分類はあくまでざっくり分けたものです。出身母体が何かというだけの話で、その後は独自路線を突っ走っている会社なんていくらでもあります。
例えば富士通なんて会社は、富士電機の通信部門が独立してできた会社です。
でも、母体である富士電機よりも今や富士通の方が知名度や規模が大きくなっています。独自の企業グループを形成するほどです。
また、NTT関連グループも分類が難しいです。
NTTデータも、出身母体はNTTではありますが、NTTグループは中で複雑に絡み合っています。NTTコミュニケーションズ等の通信回線会社もSIerとして仕事をすることもあるからです。
また、外資系はこれまた分類が難しいです。IBMやSAPといった会社です。これらはメーカー系の立ち位置に近いと思います。
どこがどこの方面に強いか?
官公庁といったお国のシステムは圧倒的にNTTデータ系列が強いです。因みに、SIer業界での売上トップはNTTデータが君臨しています。
(それほど官公庁の案件は額が桁違いということです。)
社会インフラ系のシステムはメーカー系が強いです。これは、昔から提案を行い長くそのシステムを育ててきた専門的な知識があるからです。
パッケージと言った一般の人向け(会計ソフトなど)は独立系が強いです。これは、強いというよりも住み分けていると言う感じでしょうか。メーカー系としては薄利多売の商売になるため、あまり力を入れても大きな売上にならないからです。
しかし、結局のところこれは”元請け”の話であって、互いに業務を委託する関係になっています。
ですから、案件が大きくなればなるほど、互いに一部の業務を委託し合う仲になるのです。
業務委託の流れ
これは私の経験した案件の場合です。
ある会社(ICT事業をメイン業種としていない会社)がシステムを刷新したいと考えたとします。するとその会社は、先ずは自分のIT子会社に必要なシステムや新しく提供するサービスについて相談をするのです。
つまりユーザー系SIerが先ずは業務委託されます。
次に、案件の内容を煮詰め、これをメーカー系SIerや独立系SIerに委託します。
そして、各SIerは出来上がったシステムをユーザー系SIerに納めます。
その後、ユーザー系SIerはそれを委託された親会社に納入するという流れです。
ただし、これは本当に一部の例で、多種多様な依存関係があるため一概にこの流れの通りであるとは言えません。
その会社のIT子会社で完結してしまう場合もあります。
なぜ各々でIT子会社を持っているのか?
直接、メーカー系や独立系のSIerに委託してしまえば良いじゃないか!と思うかも知れませんが、これはこれで難しいのです。
何故かというと、システムを保守/運用(つまりメンテナンス)を行うために必要だからです。
システムが大規模になればなるほど独自のノウハウが必要になり、必然的に自分のグループの中にIT子会社を持っておき、ICT分野の相談窓口としておきたいという流れになるのです。そして、通常時は自分たちが使用するシステムのメンテナンスをしてもらうということです。
SIerのお仕事とは何か
SIerのお仕事は大きく分けて以下になります。
- コンサルティング
- プロジェクト運営
- システム保守(メンテナンス)
システムは作って終わりではありません。
IT子会社を持っていないお客様の場合、システムの保守(メンテナンス)まで面倒を見ますということがあります。
また、オーソドックスな開発の流れはウォーターフローモデルでの開発です。
これは、作業の単位を区切って管理し、一つが完了すると次の作業に移るというやり方です。一番理解しやすいですし、管理が楽なので未だにメインの開発スタイルです。
コンサルティング
設計より上の工程を上流工程、それより下を下流工程と言ったりします。
コンサルティングとは超上流工程です。要件定義よりも上にある作業になります。
常日頃からお客様の立場で物事を考え、その会社で必要なIT戦略を一緒に練るという仕事になります。
中にはこれを専門で行う会社もあります。所謂、ITコンサルと呼ばれる会社です。
SIerにとっては業務の一部を取られる商売敵にもなりますし、時にはITコンサルが元請けになってしまい、その配下で仕事をすることになるといった場合もあります。
プロジェクト運営
要件定義からシステム・テストの一連のプロジェクトを円滑に進めるため、様々な問題を解決する仕事です。
要件定義から外部設計・内部設計(この設計工程は会社によって様々な言い方があります。)まではSIer会社が行い、プログラミングからシステムのテストまでをソフトウェア開発会社に委託するパターンが多いです。
ですが、委託したからそれで終わりというわけではなく、どちらかというと作業を行うプロジェクトメンバを集めるという言い方の方が適切でしょう。
彼らが仕事を行いやすいように作業の工程を練りなおしたり、お客様の要望をより明確に引き出してお客様と作成中のシステムとのイメージの齟齬を出来るだけなくすよう努めます。
最悪なパターンは、お客様から「全然想像していたのと違う!!こんなの使えないし、受け取らない!」と言われるパターンです。受け取ってもらえないため、納入したことにならず1円もお金を払ってくれません。
これはかなり揉めますし、賠償責任がうんぬんかんぬんという話にまで発展します。
当然ながら、プロジェクト運営が失敗し開発が中断してしまうケースもあります。
大手SIer会社になればなるほど、このプロジェクト運営に特化した会社になります。裏を返すと、実際にプログラムを書いたりする開発作業は割合的に少なくなるということです。
人間同士の認識の差を埋めるという作業がメインになります。
就活生によく求められる「コミュニケーション能力」ですが、飲み会でウェーイ!誰とでも仲良く出来るぜ!!的なことを求めているのではなく、少し嫌な言い方ですが、自分の苦手な人であってもいかにコントロールしチームをまとめ上げるかということが求められているスキルなのです。
重ねて言いますが、サークルのような仲間内の慣れ合いのチーム運営の経験なんぞ一つも仕事の役に立ちません。(仕事舐めるな。)
勘違いしないでね。ほんと。
私は現場の人間なんで人事がどういう人を採用するか知りませんけどね。
仮に私が人事ならば、研究内容について重視します。どのような仮定を置き実験を行い、その結果としてどのような知見が得られたか。結局は、ちゃんと一生懸命勉強してきたよねってことです。その粘り強さや推察力があれば十分。後は、現場で経験しながら実業務のノウハウは吸収すれば良いと思います。
大事なのは”どのように考え、どのように解決するか”というプロセスを経験しているかという点です。人事も研究内容を調べて、内容を突っ込むぐらいないとダメだと思いますよ。そうじゃないと優秀な人材は獲得できません。
あぁ・・・すみません。ついついブラックな面が出てしまいました☆
システム保守(メンテナンス)
ここは出来ることならばゲッチュしたい仕事です。
ちゃんと契約して保守しますよという契約を交わすことが出来れば嬉しいですね。お金がありますから、ちゃんと常に人員も確保できます。
がしかし、なかなか上手く行かなかったりするんです。
納入後のトラブル対応や緊急時の呼び出し対応みたいなことになっちゃうと、ただ苦しい(自分たちの過失なのでお金も請求できなかったり)お仕事になってしまいます。
そうならないためにも、プロジェクト運営の段階でバグ(設計の過失に起因するイレギュラーな動作や、誤ったプログラムを埋め込んでしまうこと)をちゃんと潰しきる、つまりテストをしっかり行って誤りがないことを確認することが大事です。
IT業界は広い
さて、今回はSIer業界に絞ってお話しました。実際にプログラムを書いて開発するのはソフトウェア開発会社の方が多かったりします。
また、コンサルティングに特化したITコンサルも存在します。
Web業界はまた違った感じで、この業界との接点が少ないので私はあまりよく知りません。
そして、だんだんと今はソフトウェアとハードウェアの境目がなくなってきています。
個人的な意見としては、ハードウェア(センサー系)を持つソフトウェア会社が伸びるのではないかと思います。例えば、アルプス技研とか村田製作所と言った会社です。
後は、システムの中枢をどこが握るかも大事です。システム(ソフトウェア)は今までは業務の効率化を行うことが主体でした。しかし、今からはAIやビッグデータ解析と言った、”システムが人間側に提案を行う”という時代に変わろうとしています。
この部分の覇権争いは激しさを増しています。大手SIerはこの部分に進出せざる得ないでしょう。システムを設計する上で、この”中枢”部分を外すことはできなくなるはずですから。
SIer業界について少しはご理解いただけたでしょうか。
もし就活を行っている人がここを見たならば、一言伝えたいことがあります。
「SIerだけが仕事じゃないぜ☆」
工学系だからとか、情報系だからという理由でSIer業界に絞らなくても全然構わないと思います。特に新卒の場合は。
だって、新卒なんだから何でも出来ます。
仕事なんて、入ってから一生懸命勉強すれば良いのです。若いうちは何でも吸収できます。
入社して数年立って、私はそう思いました。「俺、SIerに絞る必要なかったんじゃねーか?」って。
私の時代は就職氷河期でしたが、今思うと自分で自分の可能性を制限していたように思います。
逆に、氷河期だったからこそあれこれ見てみるのも面白かったかも。
という訳で、アドバイスにもならないまとめで終わりにさせていただきます(笑)
それでは、adios!!