こんばんは。Milkです。
遂にこの日を迎えてしまいました・・・
2015年からHONDAはMcLarenと共に、伝説の「McLaren HONDA」として復活を果たしました。
しかし、その成績は芳しくなく、2017年の現時点(2017/09/15)までに1度も表彰台に立つことは出来ていません。
そして、次戦のシンガポール戦を迎える前に、前々から噂されていたことは現実のものとなりました。
そうです。彼ら「McLaren HONDA」は、「McLaren」と「HONDA」に分離することになったのです。
貪欲に求めるものが勝つ。それがどんな手段であっても。
HONDAはリーマンショックの煽りを受け、F1の世界から一度、姿を消しました。
そして、皮肉にも翌年のために用意したマシンを含みチームを買収したロス・ブラウン率いるチームが、F1チャンピオンを獲得したのです。
つまり、後もう一年踏ん張れば、F1チャンピオンのタイトルを手中に収めることが出来たかもしれないのです。
しかし、HONDAはF1への興味を失いました。
また、それを維持するだけの経済的な余裕もなかったのです。
McLarenがHONDAを引き戻した
F1のレーシングチームには、McLarenと言うチームが存在します。
その歴史は長く、幾度もコンストラクターズチャンピオン(チームとしての総合優勝)、そしてドライバーチャンピオンを輩出してきました。
多くの人の記憶にあるのは、伝説のチーム「McLaren HONDA」でしょう。
アラン・プロストとアイルトン・セナを擁する最強の時代です。
HONDAは成功を収め、F1の世界から一度離れます。
その成功の時代を築いたのは、McLarenにロン・デニスがいる時代でした。
HONDAが撤退した後、McLarenはPU(パワーユニット)をメルセデスから供給を受けたりしましたが、満足なパフォーマンスを発揮できずにいました。
ロン・デニスはMcLarenを率い続け、そして決断します。
HONDAを呼び戻そうと。
それには理由がありました。
カスタマーチーム(PUを購入して運営するチーム)では頂点に立てない。
ワークスチーム(PUを製造するメーカーが運営するチーム)になる必要がある。
よって、HONDAのPUをMcLaren専属に供給してもらうことによって、伝説のワークスチーム「McLaren HONDA」を復活させようとしたのです。
McLarenの内部分裂
ロン・デニスには、過去の成功の記憶がありました。
よって、HONDAが2015年に壊滅的な結果を出したとしても、HONDAを擁護し続けました。
きっと、HONDAの実力は上がってくると。
2016年は上向きになりましたが、中団グループから抜けることは出来ずにいました。
ロン・デニスはそれでもHONDAを守り続けました。
しかし、確実にMcLarenとHONDAの関係は悪化し続けていました。
McLarenはHONDAのPUの能力が低いと非難し、HONDAはMcLarenのシャシーの能力によってパワーが最大に出力出来ていないと主張。
この状態をつなぎとめていたのは、ロン・デニスでした。
ここで、McLarenはロン・デニスを解雇するという手段に出ます。
彼がHONDAに固執することが、McLarenの成長を阻害していると上層部に判断されたのです。
これにより、McLarenは表向きには「HONDAと共に勝利を目指す」としながら、水面下で他社のPUの搭載を画策するようになりました。
HONDAを追い出すことが出来ない
参照:マクラーレン 「ホンダとの契約を解消しても財政面は乗り切れる」 【 F1-Gate.com 】
HONDAはMcLarenに対して、財政的に支援を行っていました。
よって、HONDAを追い出した場合には、有力な”スポンサー”を失うことになります。
既に成績不振に陥っているMcLaren HONDAは、スポンサーが離れていき、メインスポンサーが付かないという異例な状態になっていたのです。
少なくとも、HONDAの莫大な資金援助はMcLarenを助けていたでしょう。
その援助がなくなった時に、McLarenは組織を維持できるのか?と言う問題がありました。
(当然ながら、HONDAとの複数年契約を破棄するので、違約金も発生します。)
もう一点、問題がありました。
それはPU供給レギュレーションの問題。
どちらかと言うと、こちらの方が問題でした。
現在のレギュレーション(ルール)では、PUメーカーが供給出来るのは3チームまでとなっています。
現時点でPUメーカーは、「メルセデス」「フェラーリ」「ルノー」「HONDA」の4社です。
しかも、HONDA以外は既にワークスチームを含め3チームに供給を行っています。
よって、McLarenはどこかのチームのPU搭載関係を破壊しなければならないのです。
ターゲットとなったのは弱小チーム
参照:ザウバー:F1イタリアGP 金曜フリー走行レポート 【 F1-Gate.com 】
まずターゲットにしたのは、「ザウバー」と言うチーム。
これは昨年まで財政難に陥っていたチームでした。
よって、HONDAの資金援助はザウバーにとってメリットになるだろうと考えたのです。
これによって、ザウバーは「フェラーリ」のPUの搭載を止めて、「HONDA」に乗り換えるように差し向けました。
しかし!ザウバーはロングボウ・ファイナンスという投資会社に買収されます。
結果的に、資金問題は解決!
また、HONDAと契約寸前になって、チームを率いてきたモニシャ・カルテンボーンを解雇。
そして新しく就任した、フレデリック・ヴァスールによって白紙に戻されます。
PUと合わせて必要になるのは、その動力を操るためのギアボックスです。
しかし、HONDAのPUを操るためには、当然ながらMcLaren製のギアボックスが必要となります。
ヴァスールはMcLarenの動向に不信感を抱くようになりました。McLarenとHONDAが提携を解消した際に、McLarenのギアボックスが手に入る確信が得られなくなるためです。
McLarenは提供を約束していましたが、それが実現するかどうかはその時にならなければ分かりません。
よって、白紙撤回になったのです。
最終的には「トロ・ロッソ」に供給されることになった
次にMcLarenがターゲットにしたのは、これも中団グループを走行する「トロ・ロッソ」と言うチーム。
参照:トロ・ロッソ:F1イタリアGP 金曜フリー走行レポート 【 F1-Gate.com 】
「レッドブル」のBチーム(ドライバー育成チーム)として運営されています。
ただし、これにも問題が。
「トロ・ロッソ」はルノーのPUを搭載することを複数年契約していました。
よって、HONDAのPUを搭載することは、ルノーとの契約を破棄することになり、違約金が発生します。
ここで、ルノーの政治的な駆け引きが始まります。
「カルロス・サインツを貸してくれるなら違約金の代わりにしてもよい。」
ルノーはこのように持ちかけたのです。
また、これには「レッドブル」への間接的な攻撃も含まれていました。
先ずは将来が有望視されている、ドライバーを確保出来ること。
そして、2019年にレッドブルとのPU供給の契約が終わるルノーは、これを足がかりにしてレッドブルと契約更新ではなく縁を切りたいと考えているのです。
これは、レッドブルとルノーとの確執が過去に発生していることに関係しています。
現在のMcLarenとHONDAの関係に非常に良く似ています。
因みに当時、レッドブルにPUを供給してくれるPUメーカーはおらず、レッドブルはルノーに不満と批判を繰り返しながらも、ルノーのPUを搭載せざる負えませんでした。
しかし、嫌味なことにルノーのPUであるという事にはしておらず、スポンサーである「TAG Heuer」の名前でPU名を登録しています。
つまり、「TAG Heuer」がPUを供給しているということにしているのです。
ルノーに完全に喧嘩を売っています。
この状態に飽き飽きしたルノーは、トロ・ロッソへのPU供給が切れ、次にレッドブルへのPU供給を終えようと考えているのです。
最後に
このように、この問題はMcLarenとHONDAが提携を解消したというだけの問題ではないのです。
裏では、ルノーの駆け引きもうごめいていました。
F1は速さだけでの世界ではありません。
いかに政治的に有利な立場を保てるか。それが鍵を握る部分もあるのです。
McLarenとHONDAの提携は今年までは続きます。
そして、来年からは「マクラーレン・ルノー」と「トロ・ロッソ・ホンダ」が誕生します。
それぞれの運命は・・・神のみぞ知る。